研究課題/領域番号 |
19H04436
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
吉田 憲司 千葉大学, フロンティア医工学センター, 准教授 (10572985)
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研究分担者 |
秋田 新介 千葉大学, 医学部附属病院, 講師 (00436403)
林 秀樹 千葉大学, フロンティア医工学センター, 教授 (20312960)
山口 匡 千葉大学, フロンティア医工学センター, 教授 (40334172)
小山 大介 同志社大学, 理工学部, 教授 (50401518)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 造影超音波 / マイクロ・ナノバブル / 音響放射力 / 超音波ドプラ法 / リンパ管 / ファントム / 後方散乱係数 |
研究実績の概要 |
研究期間内での目標は、生体深部におけるリンパ管を対象とした動的造影超音波法の基礎実験(原理検証、超音波送受信条件の最適)を実施し、動物実験を用いてその実用性を検証することである。 初年度における一つ目の目標として、原理検証用の基礎実験システムを構築し、超音波ドプラ法を用いて造影剤(マイクロバブル)の移動が正しく評価できるかということを検証した。具体的には、長作動距離の光学顕微システムと超音波送受信機構を組み合わせたシステムを構築し、超音波により造影剤の移動を検出することが可能であることを実験的に証明した。基礎原理を確認できたことは提案法の実現可能性を示すという意味で意義が大きい。二つ目の実施項目として、超音波送受信条件の最適化を目的とした可視化実験を実施した。体表模擬ファントムを作成し、自作超音波スキャナシステムを用いて内部に埋め込んだ模擬脈管の可視化を行った。リンパ管と同程度の大きさである直径0.1 mm以上の管であれば検出でき、直径0.3 mmの場合は全体像の描出も可能であることを確認した。超音波の周波数、音圧、パルス繰返し周波数について複数の条件で同様の実験を実施し、優先すべきパラメータの同定と目標値の設定を行うことができた。得られた知見は次年度以降の計画を立案・検討する上で重要なものである。三つ目の実施項目として、将来的な生体への適用を想定し、イメージングにおいて重要なパラメータとなる生体組織の音響物性(後方散乱係数,音響インピーダンス)のデータ収集も実施した。上記の三つの取り組みから得られた成果を超音波関連分野の論文誌と学会において報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は、おおむね順調に進展していると判断する。 その理由として、1)一年目の目標として掲げた提案法の原理検証を実施できたこと、2)可視化実験から二年目以降の検討項目を明確にできたことが挙げられる。1)についてはゲルファントム内に走行する直径数百マイクロの管内のマイクロバブルが可視化対象であり、実施当初は複数の問題が想定された。特に「光学顕微システムの調整」、「超音波送受信機構との組み合わせ」など時間を要する課題もスムーズに滞りなく遂行することができた。同システムを用いて得られた結果が論文誌に採択されたことも大きな理由となる。2)については、造影剤を破壊することなく超音波ドプラ法により造影剤を検出するためには音圧を抑制し、パルス繰返し周波数を高くすることが重要であるなど複数の重要知見を取得できた。
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今後の研究の推進方策 |
リンパ管に造影剤を到達させるためには造影剤の皮下投与が望ましいと想定される。現状のマイクロサイズのバブルでは皮下組織の間隙を通過してリンパ管に到達することが難しいため、直径数百ナノメートル程度のバブルを使用する必要性が想定される。この点については、一年目で構築した顕微観察システムを用いて自作ナノバブルの移動の検証を行う予定である。 提案法の超音波イメージング手法としての最大の問題点はリアルタイム性である。現状の集束超音波ビームを用いたパルスシーケンスでは数百本の走査線から一つの画像を作成している。数mm/s以上の造影剤の移動速度を達成するためには、走査線当たりのパルス送受信時間は少なくとも数十ミリ秒必要となり、走査線百本以上の画像を作成する際に超音波の送受信時間のみで数秒を費やしてしまう。この問題は、平面波を送信し、受信時に並列でビームフォーミングする高速イメージングのパルスシーケンスを適用することで解決できると想定している。この点について、次年度以降において高速イメージングが可能なフェーズドアレイ技術を用いたデータ収集機構を用いて検討する予定である。
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