本研究の目的は,第一に,Magnetic Resonance(MR)を用い,頭部の導電率分布を非侵襲で計測する手法を確立すること,第二に,これに基づき,脳回や脳溝をまたぐ神経電流源に対し,その領域形状を推定する脳磁場(Magnetoencephalography:MEG)逆問題解法を開発すること,以上二点である. 第一の導電率推定に関して,体内電磁場が満たすべき物理法則をみたすよう,電場ベクトルと電気特性を更新しながら推定していく反復解法を導出した.収束を理論的に保証するとともに,数値シミュレーションおよび生体を模擬したファントムを用いて実験的に検証した.観測不能な磁場成分に関しては生体構造を用いた数値シミュレーションを併用する手法も提案した. 第二のMEGに関して,昨年度,推定対象である局所活動源に加え,背景活動もパラメトリックに表現し,両者を同時に推定する手法を開発した.ただし問題点として背景活動を表現するパラメタ数に制限がつき,様々な背景活動を必ずしもよく表現できないことが明らかになってきた.そこで,局所活動源はパラメトリックに表現し,背景活動源は皮質メッシュ上の電流分布をイメージングモデルで表現する異種ソースモデルを開発した.局所活動源と背景活動源が同時に存在する場合,従来のパラメトリックモデルだけでは局所活動源位置がずれて推定されてしまうこと,従来のイメージングモデルだけでは局所活動源が分散してしまうこと,提案の異種ソースモデルでは両者が分離して推定可能なことを数値シミュレーションで示した.さらに,てんかんの実データに対して提案手法を適用し,側頭葉前部のてんかん焦点と,後頭部付近に広がる背景活動源を分離して推定できることを示した.
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