研究課題
本研究では磁気共鳴を併用することを予定しており、顕微鏡型ラマン装置は磁場の影響を強く受けるために実験に不適切であるとの判断から、ファイバ型ラマン装置を構築してサンプルの測定を試みた。しかしファイバを通した生体サンプルの測定を試験的に行ったところ、全体に感度不足であった。そこで光源や接続するファイバの最適化を行い、装置構築当初に比べて約30倍の感度を得ることに成功し、mM単位で脂肪酸とアルコールの濃度を再現性を持って計測することが可能となった。また顕微鏡型ラマン装置で皮膚炎症モデルマウスにおいて検出された特徴的なスペクトル変化を、ファイバ型ラマン装置でも同等に検出できるだけの検出感度を得ることができた。一方で、磁気共鳴実験の際に電磁パルスを用いることを想定して電磁シールドを作成した。このシールド内に静磁場を創出するためのネオジム磁石(450 mT)2個をサンプルステージを挟んで向かい合わせに設置した。さらにサンプルステージ上に1重巻き銅線コイルを作成し、電源とファンクション・ジェネレータを接続して交流磁場を作成する装置を完成させた。これにより、ステージ上で400 mTの静磁場と、最大振幅約100 mTの交流磁場(周波数は刺激装置で変更可能)の創出して組み合わせることに成功した。最終年度にこれらを組み合わせて磁場を加えた際のラマン散乱光の強度を測定するために、サンプルステージ内に散乱光検出用のファイバを設置する作業を完了した。
2: おおむね順調に進展している
ファイバ型ラマン装置においては生体由来のラマン散乱光を増強無しでもmM単位で検出できる感度を得ることに成功しており、磁気共鳴の装置に関しては安定した磁場を創出することに成功している。次年度以降の最終的な実験準備が整ったことから、概ね順調に進行している。
改良されたファイバ型ラマン装置磁場と、磁場発生装置のを合わせた実験を行う。具体的には、静磁場と交流磁場を創出できるサンプルステージに脂肪酸やアルコールなどの標準試料を設置してファイバ型ラマン装置のファイバプローブをサンプルに密着させ、磁場の有無、また交流磁場の周波数によるラマン散乱光の変化を記録する。これにより、磁場がラマン散乱光のスペクトルに及ぼす影響を明らかにする。標準試料の計測でデータが蓄積できた場合は、実験動物の皮膚組織などの生体試料の計測も併せて実施する予定である。
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 1件)
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