研究課題/領域番号 |
19H04444
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
世良 俊博 九州大学, 工学研究院, 准教授 (40373526)
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研究分担者 |
田中 学 千葉大学, 大学院工学研究院, 教授 (20292667)
工藤 奨 九州大学, 工学研究院, 教授 (70306926)
越山 顕一朗 徳島大学, 大学院社会産業理工学研究部(理工学域), 准教授 (80467513)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 肺胞リモリング |
研究実績の概要 |
肺疾患としてサーファクタント欠乏時を模擬するためマウスに対して肺洗浄を行い、SPring8放射光を用いた動態イメージング実験を行った。安楽死直後の健常・肺洗浄マウスに対して自作の人工呼吸器によって肺圧力をステップ的に変化させながらCT撮影を行った。 細胞機能として細胞内肺サーファクタント輸送に注目し、リモデリング時の機能変化を調べた。肺胞上皮細胞におけるアクチン細胞骨格と肺サーファクタント分泌能の関連性について「伸展によるアクチン細胞骨格のリモデリングが界面活性物質を分泌する小胞の輸送を阻害している」との仮説を立て、周期的な伸展負荷時の肺胞上皮細胞内の小胞と細胞骨格に対してライブセルイメージングを行い、その動態変化を調べた。リモリングによって細胞骨格が増加しまた細胞内の小胞も増加したことから、仮説が正しい可能性を示した。 流体解析は、SPring8放射光CTで得られた肺胞の実変形および動態解析データを用いて数値計算を行った。まずは健常マウスの小規模(肺胞が数個)な実形状肺胞モデルを用い、さらに実験で得られた実変形をモーフィングによって再現し、流体解析に取り組んだ。従来の数値計算では肺胞の変形を相似変形と仮定していたのに対し、実変形を再現した流体解析を行い、従来報告されていた流れ場とは違うことを明らかにした。 構造解析では、SPring8放射光CTで得られた肺胞の形状データを用いて、呼吸による伸展負荷時の肺胞の力学場をシミュレーションした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
健常マウスと肺洗浄マウスに対して、SPring8放射光を用いた動態イメージング実験を予定通り行った。 細胞実験では、リモリング時の細胞内小胞輸送機能について予定通り実験を行った。同時に、肺表上皮細胞と血管内皮細胞を共培養する実験系についても検討しており、昨年度は基底膜として使用する多孔質薄膜を作成することに成功したので、今年度はさらに最適化を進め実際に共培養も試みる予定である。 流体解析・構造解析においても、共同研究者とともにSPring8で得られたデータを用いた研究を進めており、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は昨年度SPring8で実験を行った健常マウスと肺洗浄マウスの動態イメージングに対して非剛体レジストレーションを行い動態解析を行う。 細胞機能として本年度は細胞の流動性に着目する。細胞骨格のリモデリングによって細胞膜・細胞膜の流動性の変化を蛍光褪色回復法 (fluorescence recovery after photobleaching, FRAP)によって調べる。また、昨年度作成した多孔質薄膜の最適化を行い肺胞上皮細胞と血管内皮細胞の共培養方法について予備実験を行う予定である。 流体解析は、SPring8放射光CTで得られる肺胞の実変形および動態解析データを用いて共同研究者の田中とともに数値計算を行う。昨年度から実形状・実変形を再現した流体解析に取り組んでいて、本年度は肺胞モデルの大規模化を試み気流シミュレーションおよび粒子輸送シミュレーションを行う。 構造解析では、SPring8放射光CTで得られた肺胞の形状データと動態解析データを用いて、呼吸による伸展負荷時の肺胞の力学場を共同研究者の越山とともに解析する。本年度は、健常時の動的な変形解析手法を確立し応力状態を明らかにする。
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