研究課題/領域番号 |
19H04445
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
堺 裕輔 九州大学, 工学研究院, 助教 (10608904)
|
研究分担者 |
江口 晋 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (80404218)
中澤 浩二 北九州市立大学, 国際環境工学部, 教授 (00304733)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 肝細胞 / 内皮細胞 / 胆管 / 類洞 / 肝再生医療 |
研究実績の概要 |
細胞の立体組織化は再生医療や薬物代謝アッセイ等に有望なアプローチであるが、複雑多岐な構造・機能を持つ肝臓の再構築は困難を極めている。本研究では、秩序立った肝小葉構造を再現するため、初代肝細胞、類洞内皮細胞、胆管細胞を立体配置して“効率的な物質交換を実現する肝細胞/類洞索状構造”と“胆汁排泄を担う胆管”の複合組織を作製することを目的とする。 孔貫通型シリコーンフィルム(Multi-Pored Silicone Film; MPSF)を貼り付けたコラーゲンコート温度応答性培養皿(TRCD)にPtスパッタリング及びPEGを修飾し、格子状の細胞接着培養機材を作製した。格子幅300、500、800 μmでHUVECを接着させた後に内皮細胞を支持するヒト脂肪由来幹細胞(hADSC)を共培養すると、接着領域中央にHUVECが凝集した。特に格子幅500 μmでは、ネットワーク形成効率が97.4%であり、ほぼすべてのHUVECが連なっていた。ラット初代肝細胞シートをHUVECネットワークと重層して複合組織を作製した。培養環境下でのアルブミン産生能は肝細胞のみと比較して同等であったものの、ランダムに肝細胞とHUVECを混合した条件と比較して高い傾向が見られた。 さらに、ヒト類洞内皮細胞(hLSEC)を用いて肝/内皮細胞組織の作製を行った。MPSFをコラーゲンコートTRCDに貼り付け、初代肝細胞を孔貫通領域に接着させた。MPSFを剥離した後、hLSECを播種して肝/LSEC索状組織を得た。培養8日目にリアルタイムRT-PCRで評価したところ、肝細胞のみ及びランダムな共培養と比較してAlb、Aat、Ldlr、Tat、Tdo2、Cps1、Arg1、Ttr、G6pc等の肝特異機能の高発現を維持した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
2020年度は、①肝細胞/類洞内皮細胞索状配列・三次元培養、②肝/内皮細胞組織と培養胆管の複合、を大きな目的とした。コロナウイルス感染症の拡大影響により、大幅に研究計画を見直すと共に、2020年度補助金を繰り越すこととなった。再考した計画に従い、肝細胞/類洞内皮細胞索状配列・三次元培養は実施した。一方、培養胆管の作製条件の最適化に取り組んだものの、肝細胞と培養胆管の接着効率が低く、複合組織の作製には至らなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
肝細胞/内皮細胞索状組織に対して培養胆管の複合を行う。また、免疫不全マウスへの移植を実施する。 培養胆管と肝細胞/内皮細胞索状組織を効率的に複合するため、接着手法を検討する。間葉系(幹)細胞の利用や、胆管と肝実質細胞をつなぐヘリング管に似た特徴を持つ細胞(例えば肝前駆細胞)の利用を検討する。FIB-SEMによる立体構造解析を検討する。 免疫不全マウスへの移植に関しては、まず確立した肝/HUVEC索状組織を皮下移植し、遺伝子解析によって移植肝細胞の機能発現を解析すると共に、免疫染色等を利用して立体構造を調査する。肝/内皮細胞/胆管複合組織も同様に移植による肝組織構築を評価する。
|