研究実績の概要 |
記憶による回路リモデリングをMRI技術で捉えることが出来るか, 若年健常者に対して実験を行った. 手指運動スキルを反復練習している最中に, 一次運動野(M1)の直上に陽極電極を置いて微弱電流を流すことで記憶を増強できる. まず初めに(運動スキル学習, 脳刺激あり)の群と(運動スキル学習, 脳刺激なし)の群でM1におけるMRI変化に差があるかを調べた. 各群に20名ずつ割り当てた. (運動スキル学習, 脳刺激あり)の群で学習成績(p=0.03), M1のMRI変化(p=0.005)が共に大きかった. 学習成績とMRI変化に相関関係は認めなかった. 次に, (偽学習[手指をランダムに動かすだけ. 運動量は学習群と同一に設定], 脳刺激あり)を新たに加え, (運動スキル学習, 脳刺激あり)の群(15名)とMRI変化を比較した. (運動スキル学習, 脳刺激あり)の群でMRI変化が大きかった(p=0.02). 以上から, 運動学習によってMRI変化が誘導される. 刺激介入による可塑性変化の操作でさらにMRI変化を大きくすることができた. これは学習の可塑性変化とMRI変化との間に関係性があることを示唆する. 上記の成果で運動学習の神経可塑性がMRI変化を調整出来ることを見出した.しかし, 記憶獲得ー神経可塑性変化ーMRI変化の関係性を強固に示すには, 記憶獲得の阻害でMRI変化が減弱するかの確認も必要である.運動スキル学習の直後に脳刺激で外乱を加えることで記憶が減弱する. 神経可塑性の阻害でMRI変化が減弱するかを検証する実験を進めている.
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