研究実績の概要 |
脳では、記憶形成の過程で神経可塑性が誘導され、神経回路の再構築(回路リモデリング)が起こる。回路リモデリングの微視的な解剖構造変化を核磁気共鳴法(MRI)顕微鏡技術で捉えることができる。申請者はこの技術を利用して、記憶に関係するMRI変化をヒト及びラットで捉えた (Abe et al., 2014 PNAS他)。しかし、MRI変化が神経可塑性と関係するのか、回路リモデリングと関係するのか、実証されていない。本提案では、記憶と関係したMRI変化が神経可塑性、その後の形態リモデリングと関係することを実証する。神経可塑性、形態リモデリングの分子メカニズムを薬理学的に阻害できる。この手法を用いてMRI変化と可塑性に伴う形態リモデリングとの関係性を立証する。申請者は、ラット空間学習の知見に一致して海馬CA1の学習後のMRI変化を捉えた。特筆すべきことに、この変化の大きさで長期記憶の成績が予測できた。MRI変化が行動変化と結びつき、生物学的な意義を持つことが明らかにした。申請者の観察した海馬CA1のMRI変化は、既報の記憶形成に関与する長期抑圧(LTD)に対応すると仮説を立てた。
LTDの誘導と関係のあるNMDA受容体を阻害することでMRI変化が小さくなるかを検証する実に着手した。コロナ市中感染状況により小動物MRI機器を現有する共同研究施設への立ち入りが大幅に制限され、実験が中断した。R2年度の計画をR3年8月まで繰り越し申請を行なった。R3年8月時点で阻害薬注入群8匹、コントロール8匹のデータ収集を終了した。予備的な解析結果を得るために解析を行なった。
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