研究課題/領域番号 |
19H04449
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研究機関 | 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター |
研究代表者 |
阿部 十也 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 脳病態統合イメージングセンター, 部長 (60588515)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | MRI / 神経可塑性 / 構造変化 |
研究実績の概要 |
脳では、記憶形成の過程で神経可塑性が誘導され、神経回路の再構築(回路リモデリング)が起こる。回路リモデリングの微視的な解剖構造変化を核磁気共鳴法(MRI)顕微鏡技術で捉えることができる。申請者はこの技術を利用して、記憶に関係するMRI変化をヒト及びラットで捉えた (Ab e et al., 2014 PNAS他)。しかし、MRI変化が神経可塑性と関係するのか、回路リモデリングと関係するのか、実証されていない。本提案では、記憶と関係したMRI変化が神経可塑性、その後の形態リモデリングと関係することを実証する。 神経可塑性、形態リモデリングの分子メカニズムを薬理学的に阻害できる。この手法を用いてMRI変化と可塑性に伴う形態リモデリングとの関係性を立証する。申請者は、ラット空間学習の知見に一致して海馬CA1の学習後のMRI変化を捉えた。特筆すべきことに、この変化の大きさで長期記憶の成績が予測できた。MRI変化が行動変化と結びつき、生物学的な意義を持つことが明らかにした。申請者の観察した海馬CA1のMRI変化は、既報の記憶形成に関与する長期抑圧(LTD)に対応すると仮説を立てた。 R2年度コロナ感染状況で中断していた実験を再開し。R3年度にLTD誘導経路であるNMDA受容体活性化を阻害薬でブロックすればMRI変化も阻害されるかを観察した。ラット15匹に空間学習を行わせ、NMDA受容体拮抗薬を髄液注入した。学習による海馬の変化をMRIで観察した。対象コントロール群(N=15)には空間学習を同様に行わせ、生理食塩水を髄液注入した。MRI変化を二群比較t検定を行い、NMDA受容体拮抗薬投与群ではMRI変化が小さい傾向があることを示した(p=0.075)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初、NMDA受容体拮抗薬を計画書通り海馬組織に注入していた。しかし注入圧によるMRI変化が想定以上に大きいことを確認した。そのため髄液注入に切り替えた。投与群では仮説通りMRI変化が阻害される傾向を観察した。しかし統計学的な優位には到達しておらず, サンプルサイズを増やす必要がある。R4年度に引き続き同実験を継続する。 海馬組織注入から髄液注入に計画を変更した事情により、結果から言える結論を修正する必要がある。NMDA受容体拮抗薬の髄液注入で海馬MRI変化が小さくなったことは確かだが、拮抗薬が海馬に作用したかは議論の余地が残る。
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今後の研究の推進方策 |
NMDA受容体拮抗薬の髄液注入で空間学習による海馬組織の変化を阻害したのか、組織学的観察で確認する必要がある。
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