研究課題/領域番号 |
19H04450
|
研究機関 | 静岡県立大学 |
研究代表者 |
小出 裕之 静岡県立大学, 薬学部, 講師 (60729177)
|
研究分担者 |
浅井 知浩 静岡県立大学, 薬学部, 教授 (00381731)
奥 直人 帝京大学, 薬学部, 教授 (10167322)
星野 友 九州大学, 工学研究院, 准教授 (40554689)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | ナノ粒子 / 経口投与 / N-Isopropylacrylamide / 分子認識 |
研究実績の概要 |
本年度ではまず、ナノ粒子の精製方法が及ぼすナノ粒子の物性と機能に及ぼす影響を検討した。ナノ粒子は、N-Isopropylacrylamide(NIPAm)を基盤とし、疎水性モノマーであるN-tert-butylacrylamide、負電荷モノマーであるAcrylic acidを用いて合成した。精製方法としては超純水及びメタノールによる精製、アセトン沈殿法、超遠心分離法を検討した。その結果、ナノ粒子の精製にメタノールやアセトンを用いることで、精製速度が向上した。しかし、ナノ粒子の物性に関しては超純水により精製した場合と比較して大きく変化した。さらに、ナノ粒子の安定性は著しく低下し、精製から数日で凝集してしまうことが明らかになった。そのため、ナノ粒子は超純水による精製が適していると考えた。 次に、ナノ粒子の細胞内取り込みに関する検討を行なった。ラジカル重合反応によりナノ粒子を合成すると、平均粒子径から大きく外れた極小もしくは極大サイズの粒子が僅かに含まれてしまう。これら粒子は蛍光灯予後の体内動態、おもに細胞内への取り込みに多大な影響を与えることが予想される。そこで、合成したナノ粒子をゲル濾過によりサイズ分離し、それぞれの画分を細胞に添加した。その結果、ゲル濾過によりサイズ分離することで、より粒度分布が狭いナノ粒子を得ることに成功した。さらに画分によって細胞内への取り込み量が変化することが明らかになり、ゲル濾過分離精製の有用性が示された。 ナノ粒子の糖尿病治療に関しては、糖尿病治療薬(αグルコシダーゼ阻害剤)であるボグリボースをモノマー化(G-Vog)し、ナノ粒子に組み込むことでその機能を検討した。その結果、ナノ粒子に組み込むG-Vogと疎水性モノマーであるTBAmの量を変えることで、αグルコシダーゼ阻害能が大きく変化することが明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、ナノ粒子の精製方法が与えるナノ粒子の物性や機能に与える影響、ナノ粒子の粒子径が与える細胞内への取り込みに与える影響、ナノ粒子による糖尿病治療に関する検討を行なった。着実に研究は進んでいるが、コロナの影響で研究できなかった時期があるため、想定よりも少しではあるが遅れている。
|
今後の研究の推進方策 |
これまでの検討により、粒子径の異なるナノ粒子の合成方法と精製方法を最適化した。そこで本年度は、ナノ粒子の経口投与後の体内動態を網羅的に解析し、ナノ粒子の粒子径と組成が経口投与後の体内動態に与える影響を明らかにする。 ナノ粒子の経口投与による疾患治療への応用では、昨年度合成したαグルコシダーゼ阻害ナノ粒子を用いた糖尿病治療と、潰瘍性大腸炎治療を行う。糖尿病治療では、糖尿病モデルマウスを用いたαグルコシダーゼ阻害ナノ粒子による血糖上昇阻害効果を検討する。具体的には、ストレプトゾシンを腹腔内投与することで糖尿病も出るマウスを作製し、マルトース及びαグルコシダーゼ阻害ナノ粒子を経口投与することで、血糖値の上昇阻害効果を検証する。ナノ粒子を用いた潰瘍性大腸炎治療に関しては、潰瘍性大腸炎患者の大腸では、炎症によって生じた死細胞表面にフォスファチジルセリン(PS)分子が露出する。このPS分子が免疫細胞表面のCD300aに結合することで、炎症をさらに悪化させているが知られている。本研究では、死細胞のPS分子に結合するナノ粒子を開発することで、死細胞と免疫細胞との相互作用を阻害し、潰瘍性大腸炎の増悪を防ぐ革新的治療薬を創製する。
|