研究課題/領域番号 |
19H04453
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
関根 秀一 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (60541737)
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研究分担者 |
本間 順 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (50507366)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 血管床 / 毛細血管 / 心筋組織 / バイオリアクター / 生体内チャンバー |
研究実績の概要 |
細胞の多層化による立体組織の構築には、酸素や栄養の供給・老廃物の除去が物質の拡散のみでは限界があるため、構築組織内へ血管網を付与する技術の確立が必要と考える。我々はこれまでに小動物(ラット)を用い、吻合移植可能な血管付き末梢組織を外科的処理を行うことでインビボで閉鎖系動静脈回路を再構築し、それを血管新生を誘導する血管床として利用する技術を開発してきた。その血管床上へ心筋細胞シートを積層し、積層化組織への十分な血管新生を待って、繰り返し積層する段階的移植を行うことで、生体内と生体外の両環境において毛細血管網をともなった厚い心筋組織の構築に成功している。本研究では生体外血管網付与技術を大動物(ブタ)へ発展させ臨床応用可能な血管付き高機能ヒト心筋組織を作製することを目的としている。今年度は、ブタを用いて遊離血管床として利用できる血管吻合可能な動静脈付き組織の選定を行うと共に、閉鎖系動静脈回路を持ち生体外で灌流培養を可能とするための生体内埋め込み型チャンバーを開発し、ヒト臨床へ応用可能なサイズの遊離血管床の作製を行った。具体的には、遊離血管床として利用できる血管吻合可能な動静脈(2mm径以上)付き組織の探索を行った。そして単離した組織の血管系を閉鎖系動静脈回路として再構築させるために必要な隔離膜(組織癒着防止膜)や血管新生を促進させるための血管増殖因子徐放材料を検討し、生体内において毛細血管網を誘導するのに十分な血管床を構築するインビボプリバスキュラリゼーション法の最適化を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
まず始めに、遊離血管床として利用できる血管吻合可能な動静脈付き組織の探索を行ったところ、脾動静脈とその末梢の組織である大網を利用できることを見出した。次に、閉鎖系動静脈回路を備え、生体外で組織灌流培養が可能でかつ血管新生を誘導可能とする血管床を構築するために、生体内埋め込み型チャンバーの作製を行った。具体的には脾動静脈を単離し大網を外科的に3cmx3cm大にトリミングした後に、組織癒着防止作用を持つエチレンビニールアルコール(EVOH)膜を用いてチャンバーを作製し、単離した血管付き組織を1週間体内へ留置することで血管床として利用可能な毛細血管網が再構築できることを明らかにした。これらの結果より、本年度の目標である生体由来の遊離血管床の作製を達成したことから、本研究は順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、生体外血管網付与によるヒト立体組織構築技術の開発に着手する。達成目標は本年度開発した生体内埋込み型チャンバーを用いて作製したブタ血管床をバイオリアクターを用いて生体外で灌流培養を行えるシステムを構築し、生体外血管床上へのヒト心筋シートの積層と灌流培養による心筋組織への毛細血管誘導法の確立とする。灌流速度や組織・毛細血管への間欠的パルス加圧負荷など、生体環境を模倣した灌流培養の条件を最適化することで作製組織への血管網構築を促進する。さらに血管床と心筋シート間の毛細血管の新生を立体的に経時観察を行い、3次元微小環境における脈管再生メカニズムを解析する。これらの課題を実現することで、3年目以降の組織スケールアップならびにブタ心不全モデルへの立体組織の移植と有効性評価に関する研究を加速させる。
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