研究課題/領域番号 |
19H04461
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
赤坂 司 北海道大学, 歯学研究院, 准教授 (00360917)
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研究分担者 |
横山 敦郎 北海道大学, 歯学研究院, 教授 (20210627)
玉井 美保 北海道大学, 歯学研究院, 助教 (20619704) [辞退]
吉村 善隆 北海道大学, 歯学研究院, 准教授 (30230816)
宮治 裕史 北海道大学, 大学病院, 講師 (50372256)
星 淡子 前橋工科大学, 工学部, 准教授 (50399812)
加我 公行 福岡歯科大学, 口腔歯学部, 助教 (50824083)
牛島 夏未 北海道大学, 歯学研究院, 技術専門職員 (40374558)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | マイクロ・ナノパターン / 骨芽細胞 / 動物埋入試験 / 骨芽細胞 / キトサンパターン |
研究実績の概要 |
●研究の目的: インプラント周囲炎の根本原因はインプラント周囲に正常歯根膜が再生されないためである。本申請では、独自開発したバイオ系(超立体)微細パターン作製技術を用い、①微細パターンと各種歯周組織細胞の網羅的評価による効果の法則化、②歯根膜構造をさらに効率的に再生する超立体階層化パターンの創製を目指す。 ●研究の成果: ①モールド:今年度はキトサンのパターン作製を検討した。キトサン溶液の乾燥の度合い、加熱プレスの条件、中和の有り無しにより異なるパターンを得ることができた。今回得られたパターンバリエーションにより、基本的なパターンに関しては、組成・サイズ・シェイプの違いの評価が可能となった。 ②細胞培養:今年度はインプラントで重要な骨系細胞を集中的に検討した。骨芽細胞様細胞Saos-2を用いた石灰化では、パターンシェイプではピラー構造で高く、サイズでは直径1~0.5μm・高さ2μmが高い活性を示した。表面組成としては、プラズマ処理にて親水性化したパターン上で石灰化が促進された。細胞種の影響を調べるため、MC3T3-E1、ヒト歯根膜線維芽細胞、マウス正常骨芽細胞、ラット骨髄由来間葉系幹細胞を用いて石灰化を検討したところ、Saos-2、MC3T3-E1、ラット間葉系幹細胞は上記と似た傾向を示した。一方、マウス正常骨芽細胞は、直径1μmまたは5μmの高さ10μmピラーで強い石灰化促進が観察された。これは細胞種によってパターンの効果が少し変化することを示している。 ③動物実験:ピラーパターン化フィルム(直径1μm or 5μm、高さ10μm)をマウス骨膜付近や大腿骨に埋入し、4週間後に組織観察を行った。骨膜付近ではパターン表面での石灰化はあまり観察されなかったが、大腿骨中では石灰化が促進された。特にピラー直径1μm、高さ10μmで促進している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本課題の計画をおおまかに分けると、①微細パターンと各種歯周組織細胞の網羅的評価による効果の法則化、②歯根膜構造をさらに効率的に再生する超立体階層化パターンの創製である。 本年度に主に使用した細胞の種類は骨芽細胞であり、骨芽細胞の石灰化検討にて、パターンのサイズおよび濡れ性・表面組成の関係に法則を見出しつつある。血液細胞、破骨細胞、骨芽細胞は目途がついているので、①の方は問題なく順調に進行している。 また、②のモールド作製での難易度の高い超立体階層化パターンの方は、使用するCADやフォトマスクの作製の目途がついた段階で留まっている(研究以外にも予想に反して時間を割かなくてはいけなかったため)。この段階は十分とは言えないが、少しずつは前進している状態ではある。モールド作製に関しては次年度さらなる推進が必要と考えている。以上、全体的に考慮すると、若干遅れ気味に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
本課題の計画をおおまかに分けると、①微細パターンと各種歯周組織細胞の網羅的評価による効果の法則化、②歯根膜構造をさらに効率的に再生する超立体階層化パターンの創製である。 ●モールドの作製に関して: 現在の基準的なモールド作製の継続実施に加え、アパタイト(*500 nmレベルサイズ)やコラーゲン(*正常な3次元構造保持)パターンにさらなる改善を行う。次年度は複雑な3次元パターン:超立体階層化微細パターンの作製を中心に検討する。パターン多様化のため専用CADによるデザイン設計、フォトマスク作製、続いてレジンへのエッチングなどの各種工程をそれぞれ検討し作製する。さらに、研究を加速化させるためナノテクプラットフォームなどを積極的に利用し、様々な複雑モールドを入手していく予定である。 ●細胞培養に関して: MC3T3-E1、ヒト歯根膜線維芽細胞、マウス正常骨芽細胞、ヒト骨髄由来間葉系幹細胞にて石灰化の再現性を確認し、骨芽細胞の法則化をまとめる。さらにWestern blotやPCR、断面観察、接着斑なども検討し、石灰化促進の機構解明へ繋げる。 他の細胞種として、パターン上でのマクロファージのM1とM2状態の評価や細菌とパターン種による細菌の増殖・配向状態、抗菌活性を検討する。 ●動物実験に関して: 本年度に実施した現在のピラーやホールの埋入試験を継続し、埋入時期やパターンの違いによる石灰化の違い、再現性も含め検討する予定である。
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