研究課題/領域番号 |
19H04465
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
木村 剛 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 准教授 (10393216)
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研究分担者 |
中村 奈緒子 芝浦工業大学, システム理工学部, 助教 (70754878)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 生体材料 / 免疫シフト / バイオ界面 |
研究実績の概要 |
腫瘍内では、がん増殖的かつ免疫抑制的な状態であるがん微小環境を形成していることが知られており、免疫監視を逃避した免疫抑制状態にある。この免疫抑制状態に強く関与する細胞の一つとして制御性T細胞(Treg細胞)が挙げられ、Treg細胞は正常組織に比べ腫瘍組織にて高い割合で集積している。近年では、この免疫抑制性の制御性T細胞を選択的に体内から物理的に除去することや新たに注入することが効果的であると考えられている。本研究課題では、Treg細胞を選択的にリクルート・捕獲する空洞性マテリアルを腫瘍近傍に留置することで、腫瘍からTreg細胞を空洞性材料にリクルート・捕獲し、腫瘍での免疫抑制状態を解除できるのではないかとの発想のもと、免疫抑制状態を解除する免疫シフトマテリアルを開発することを目的としている。本年度は、空洞性材料として、多孔質材料および繊維性材料を用い、抗Treg抗体を固定化した免疫シフトマテリアルの合成およびそれを用いたin vitro・in vivoでの細胞移動評価に関する研究を実施した。空洞性材料の表面に細胞非接着性ポリマーをグラフト重合し、その側鎖に抗体を導入して、免疫シフトマテリアルを得た。多孔質材料においては、低い気孔率の材料内部への抗体導入が困難であったが、一定以上の気孔率で抗体の導入が可能であった。一方、線維性材料では、繊維径によらず抗体導入が容易であった。Treg細胞の抗体を介した捕獲がin vitroおよびin vivoで確認できた。このことから、Treg細胞を捕獲可能な免疫シフトマテリアルの基本的な設計原理が実証できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、Treg細胞を選択的にリクルート・捕獲する空洞性マテリアルを腫瘍近傍に留置することで、腫瘍からTreg細胞を空洞性材料にリクルート・捕獲し、腫瘍での免疫抑制状態を解除できるのではないかとの発想のもと、免疫抑制状態を解除する免疫シフトマテリアルを開発することを目的としている。これを達成するために、当該年度は、(1)多孔質材料および線維性材料を用いた免疫シフトマテリアルの合成および(2)免疫シフトマテリアルのin vivo・in vivoでの細胞移動評価を計画した。(1)については、多孔質材料および繊維性材料にTreg特異的に作用する抗体を導入することが可能であった。抗体固定化もある程度制御可能であり、基盤的な手法を確立できた。(2)in vitroにおいて、Treg細胞の高効率な捕獲が示され、また、他の細胞との共存においてもTreg細胞の捕獲が可能であったことから、免疫シフトマテリアルのTreg細胞への高い特異性が示された。In vivoにおいては、正常マウスの皮下への導入にてTreg細胞の免疫シフトマテリアル周囲への集積が確認でき、in vivoにおいてもTregの誘引・捕獲が示され、本年度の目的は概ね達成された。以上の研究の成果について学会等にて発表した。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降の推進方策として、(1)免疫シフトマテリアルの合成とチューニング、(2)in vitro・in vivoでの免疫シフトマテリアルへの細胞捕獲・移動の評価、(3)担がんモデル動物の作出と評価法の確立について研究を実施する。詳細は以下に記す。 (1)Treg細胞の誘引・捕獲マテリアルの合成に関して、昨年度に引続き、細胞非接着性ポリマーをグラフト重合し、抗体をグラフト鎖に導入する手法にて行う。グラフト鎖の種類・分子量・導入量、抗体分子の導入量の至適化を検討する。今年度は新たにTreg細胞を誘引する誘引分子の導入を検討する。候補となる誘引分子の免疫シフトマテリアルへの導入を施行する。 (2)上記(1)で開発した免疫調節マテリアルを用いて、Treg細胞の移動を検討する。In vitro実験では、Treg細胞のみならず、繊維芽細胞、がん細胞などの捕獲や、免疫調節マテリアル内部への侵入を検討する。In vivo実験では、マウス皮下に免疫シフトマテリアルを埋植し、内部へのTreg細胞の侵入・捕獲および繊維芽細胞の侵入を検討する。得られた実験結果を(1)にフィードバックし、免疫シフトマテリアルを至適化し、細胞の捕獲率100%を目指す。 (3)B16メラノーマ細胞をマウス皮下に注入し、担がんモデルマウスを作出する。腫瘍下等の腫瘍近傍に開発した免疫シフトマテリアル留置し、腫瘍サイズの計測、免疫シフトマテリアルへのTreg細胞の集積等について検討する。腫瘍増殖効果が得られた場合、メカニズム解明に注力するとともに得られた結果を(1)(2)にフィードバックすることで最適化を検討する。がん細胞の免疫シフトマテリアル内部への侵入による腫瘍増殖抑制効果が低下すると考えられるため、Treg細胞の優先的な内部侵入に関する材料設計等を検討する。
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