研究課題/領域番号 |
19H04467
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
鳴瀧 彩絵 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (10508203)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | ナノバイオ / 生体材料 / ポリペプチド / エラスチン / ゲル |
研究実績の概要 |
エラスチンは生体組織に弾性・伸縮性を付与する重要な機能性タンパク質であるが、その高い疎水性に由来するハンドリングの難しさから、材料利用が大幅に遅れている。本研究は、「扱いやすく、機能性にすぐれる革新的なエラスチン系材料」を創出することでライフサイエンスの発展に貢献することを目的とする。 今年度は、研究代表者が開発してきたエラスチン類似ブロックポリペプチドGPG、および新規にデザイン・合成したGPPGを用いてハイドロゲルを得た。GPGは水中で自己集合してナノファイバーを形成できるポリペプチド、GPPGはGPG中の中央ブロック(Pブロック)の鎖長を2倍にした誘導体である。これらのゲルの動的粘弾性特性(時間依存性、ひずみ依存性、周波数依存性)をレオメーターを用いて明らかにした。特に、これらのポリペプチドが、0.034wt%という極低濃度において、貯蔵弾性率G'が損失弾性率G"を上回り、ゲルとして振る舞うことを明らかにした。また、透過型電子顕微鏡による観察から、GPGとGPPGではナノファイバーの太さや分岐度が異なるものの、マクロな性質としてのレオロジーは同様であることを見出した。これは、ポリペプチドが水中で十分に長い(少なくとも 5μm以上)のナノファイバーを形成し、水中でネットワークを形成しているためと結論付けた。これらの成果をまとめ、学術論文として発表した。 さらに、一旦形成させたハイドロゲルに細胞培養用の培地を接触させることで、培地で溶媒置換されたゲルを得ることに成功し、今後、細胞培養を行っていくための準備を整えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定通り、レオメーターを新規に取得し、エラスチン系ハイドロゲルの動的粘弾性を明らかにして論文発表することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの検討により、エラスチン類似ポリペプチドのゲルはチクソトロピー性を有し、振とうによってゾル化、静置によりゲル化することを見出している。今後、レオメータを用いてこの挙動を定量的に明らかにしていく。また、チクソトロピー性を利用してゲル内部に線維芽細胞などの細胞を播種し、増殖性や表現型に関する知見を得て、ゲルの力学特性と細胞挙動の相関を明らかにする。さらに、ゲル内部でのスフェロイドの形成と力学刺激による単離を試みる。コラーゲンゲルや低分子ペプチドゲルを対照サンプルとして用い、本研究課題で開発するエラスチン系ゲルの特色を明らかにしていく。さらに、ゲルの網目成分であるナノファイバーを化学架橋したときの動的粘弾性を調べ、ゲルの強度向上をねらう。
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