研究課題/領域番号 |
19H04472
|
研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
長崎 健 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 教授 (30237507)
|
研究分担者 |
中西 猛 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (20422074)
増永 慎一郎 京都大学, 複合原子力科学研究所, 教授 (80238914)
立花 太郎 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 教授 (80311752)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | ホウ素中性子捕捉療法 / 抗体 / 二重特異性抗体 / ドラッグデリバリー |
研究実績の概要 |
BSHをEMCS(N-マレイミドカプロイルオキシスクシイミド)架橋剤を介してBSAとコンジュゲーション化した。これを抗原としてラビットに免免疫後、脾臓由来のリンパ球を採取し、シングルセルピッキングにより、BSHに特異的な抗体を産生するリンパ球を8個得た。それらのリンパ球由来のBSH抗体遺伝子を組み込んだベクターをHEK293T細胞にトランスフェクションし、培養上清で行ったELISAでは2つのクローンにおいて陽性反応が示された。作製した抗BSH抗体を用いた免疫染色の結果より、抗BSH抗体が細胞内でBSHへ結合することを確認した。抗BSH抗体Fabを用いた、SPR法による抗BSH抗体のKD値は4.02×10-7 Mであった。 さらに、作製したラビット抗BSH抗体軽鎖可変領域遺伝子にヒト抗体CL領域遺伝子を連結した二重特異性抗体軽鎖発現ベクターを構築した。ラビット抗BSH抗体重鎖可変領域遺伝子を、Her2結合部位遺伝子を含む発現ベクターに組込み、二重特異性抗体重鎖発現ベクターを構築した。そして、作製した二重特異性抗体発現ベクターを用いて、BSHとHer2に対する二重特異性抗体を作製し、ELISA評価によりBSHへの結合能を確認した。フローサイトメトリー評価では、Her2陽性細胞としてSKBR3細胞、Her2陰性細胞としてNIH3T3細胞を用いて評価を行い、作製した二重特異性抗体がSKBR3細胞への特異的結合が確認できた。これらの結果より、作製した二重特異性抗がHer2発現がん細胞へのBSH送達に有効である可能性を見出した。 作成した二重特異性抗体のin vivoでのHer2発現腫瘍細胞への集積を評価するために、SKBR3担がんマウスの作製を種々検討したが、現在のところ成功には至っていない。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
BSH 修飾BSAをラビットに免疫し、水溶性のホウ素薬剤であるBSHに対する抗体を作製し、ラビットに免役し、抗BSH抗体の作製に成功した。その抗体遺伝子を用いることで、BSHとHer2に対する二重特異性抗体を作製し、更にBSHとHer2に対する結合能を評価確認した。そして、その抗体遺伝子を用いて作製した二重特異性抗体において、BSHとHer2のそれぞれに結合することが確認でき、がん細胞選択的なホウ素薬剤送達ツールとしての大きな可能性が示唆された。それらの成果のうち、一部は第41回日本バイオマテリアル学会「優秀研究ポスター賞」を受賞し、高く評価を受けることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
作成した二重特異性抗体のin vivoでのHer2発現腫瘍細胞への集積を評価するために、SKBR3担がんマウスの作製を種々検討したが、現在のところ成功には至っていない。皮下移植の際にハイドロゲルを使用することや、他のHer2発現乳がん細胞(SKOV3細胞)、またマウスもBalb/c SCIDマウスやKSNマウスなどを検討し、動物モデルの作成を行う。 Her2抗原ヒト乳がん移植モデルの作製が困難な場合、前臨床試験を遂行できなくなるので、Her2以外のがんに対する抗原蛋白としてEGFRを認識する二重特異性抗体の作製を行う。中西らによって作製されたCD3とEGFRに対する二重特異性抗体の重鎖発現ベクターの可変領域を抗BSH抗体の可変領域に変えることによってBSHとEGFRに対する二重特異性抗体発現ベクターを作製する。Expi293F細胞へトランスフェクションを行い、抗体を発現させ、SDS-PAGEで発現の確認行う。抗BSH/EGFR二重特異性抗体の抗原BSHとEGFRへの結合特性を評価する。
|