研究課題/領域番号 |
19H04473
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研究機関 | 京都薬科大学 |
研究代表者 |
勝見 英正 京都薬科大学, 薬学部, 准教授 (30434666)
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研究分担者 |
山本 昌 京都薬科大学, 薬学部, 教授 (00166779)
木村 寛之 京都薬科大学, 薬学部, 准教授 (50437240)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 薬学 / ドラッグデリバリーシステム / ターゲティング / 骨転移 / セラノスティクス |
研究実績の概要 |
本研究は独自に開発した骨標的化技術に基づき、イメージング分子及び治療薬を効率よく骨転移部位に送達可能なハイブリッド型ナノ粒子を創製するとともに、骨転移の診断と治療を同時に実現するセラノスティクス型 DDS の開発を目指ものである。 2020年度では、骨へ効率良く移行する骨標的化ナノ粒子を利用した抗癌剤の骨標的化について検討した。すなわち、骨指向性を有するアスパラギン酸修飾多分岐ポリマーに疎水基を導入することで両親媒性ポリマーとし、水中でミセル(ナノ粒子)を形成させた。そのナノ粒子の疎水性コアに脂溶性抗癌剤を封入し、放射標識体を用いてマウス静脈内投与後の体内動態を評価したところ、ナノ粒子を利用することで抗癌剤が骨へ選択的に移行することが示された。また、ナノ粒子は、骨の代謝回転が活性化されている部位(骨破壊部位)に特に集積することが確認された。さらに、抗癌剤とナノ粒子の体内動態がほぼ同様の推移を示したことから、抗癌剤は血中においてナノ粒子からほとんど放出されることなく骨へ効率良く移行したと考えられた。また、癌細胞を左心室内投与することにより作製した骨転移モデルマウスにおいて、抗癌剤封入ナノ粒子は下肢骨における癌増殖を顕著に抑制した。以上のことから、抗癌剤の骨標的化ならびに抗癌剤を利用した骨転移治療における骨標的化ナノ粒子の有用性が示された。 本研究成果をさらに発展させることにより、骨転移の骨転移の診断と治療を同時に実現するセラノスティクス型 DDSが可能になるものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度では、開発した骨標的化ナノ粒子を利用した抗癌剤の骨標的化や骨転移抑制の可能性を示すことが目標であった。骨標的化ナノ粒子を利用した抗癌剤の効率的な骨送達やそれを利用した骨転移治療の可能性が示されており、おおむね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
開発した骨標的化ナノ粒子に治療用放射性核種を担持し、骨ターゲティング能と骨転移治療効果の連関を明らかにする。すなわち、マウスの左心室内に投与することで骨転移モデルを作製し、抗癌剤の骨標的化による治療効果を評価するとともに、体内動態解析結果との連関を明らかにする。体内動態及び治療効果の結果に応じて、物性、担持方法を最適化するとともに、治療用放射性核種と抗癌剤を同時に送達可能な骨標的化ナノ粒子を創製する。
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