研究課題
本年度は、生体吸収性をもつ黒リンナノシート複合多孔質材料及びメッシュ、金ナノ粒子‐黒リンナノシート‐ゼラチン複合多孔質材料を作製し、複合多孔質材料のがん殺傷効果と組織再生促進効果を評価した。まず、黒リンナノシートをゼラチンと複合化した多孔質材料を作製した。本複合多孔質材料を用いてヒト乳がん細胞を培養し、近赤外レーザー光を照射することにより、乳がん細胞に対する殺傷効果を生体外細胞培養実験及びマウス背中皮下移植実験により確認した。一方、本複合多孔質材料で間葉系幹細胞を培養したところ、細胞は複合多孔質材料によく接着し、培養とともに増殖した。脂肪分化誘導培地で培養すると、脂肪細胞へ分化した。よって、本複合多孔質材料は乳がん細胞を殺傷する効果及び間葉系幹細胞の脂肪分化を促進する効果を併せ持つことが分かった。また、黒リンナノシート、乳酸-グリコール酸の共重合体、コラーゲンマイクロスポンジからなる複合メッシュを作製した。本複合メッシュで培養したヒトメラノーマ細胞を近赤外レーザー光照射により殺傷することができた。複合メッシュは、ヒト皮膚線維芽細胞の増殖を促進し、血管新生関連遺伝子及び皮膚組織の細胞外マトリックス成分の遺伝子発現を促進した。よって、本複合メッシュは、メラノーマ細胞を殺傷する効果と皮膚再生を促進する効果を併せ持つことが分かった。さらに、金ナノ粒子と黒リンナノシートの光熱交換効果を組み合わせるために、金と黒リンの複合ナノ粒子を合成し、ゼラチンとの複合多孔質材料を作製した。この複合多孔質材料はヒト乳がん細胞に対する殺傷効果及び間葉系幹細胞の脂肪分化促進効果を示すことを確認した。以上の結果により、がん治療と組織再生の高次機能を備えた統合型複合多孔質材料という本研究のコンセプトが示された。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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