研究課題/領域番号 |
19H04476
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研究機関 | 国立研究開発法人物質・材料研究機構 |
研究代表者 |
荏原 充宏 国立研究開発法人物質・材料研究機構, 機能性材料研究拠点, グループリーダー (10452393)
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研究分担者 |
田中 啓之 大阪大学, 医学系研究科, 特任教授(常勤) (00432542)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 抗炎症 / アポトーシス / MPS / 脊髄損傷 / スマートポリマー |
研究実績の概要 |
脊髄損傷は損傷後時間経過とともに病態が複雑に変化するため、それぞれの時期にそれぞれの病態に即した適切な治療が必要になる。特に後遺症の低減を考えた際、脊髄の外傷自身よりも、その後起きる二次損傷をなるべく早期に抑えることが優先すべき治療となる。こうした背景のも と、抗炎症薬によって炎症を一過的に止めるのではなく、免疫細胞のフェノタイプを傷害・炎症型(M1型)から保護・抗炎症型(M2型)に誘導 することで、免疫細胞による自然治癒促進効果を狙うアプローチが注目されるようになってきた。そこで本申請課題では、免疫細胞をM1型から M2型への誘導可能な新規高分子材料の設計をおこなった。特に、生体内で日常的に起きている炎症を伴わない細胞死アポトーシス現象に着目し、ア ポトーシス細胞模倣型高分子を用いた神経組織の二次損傷の抑制を目指した。特に当該年度では、アポトーシス細胞模倣型高分子、PS基含有高分子(2-Methacryloyloxyethyl phosphorylserineポリマー ; 以下、MPSポリマー)の粒子形状の影響を調べるために、様々な物性を有する粒子の設計を行った。これまでは主にランダム共重合体を中心に評価を行ってきたが、昨年度の最後に行った実験ではブロック共重合体がさらに高い抗炎症作用を示す可能性が見えてきた。そこで今年度は、ブロック共重合体を中心材料として設計を行った。細胞実験においてはMPSを添加することでミクログリア細胞が炎症型M1から抗炎症型M2にシフトすることを明らかとなり、さらにPPARγ(ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ)の活性化も見られた。得られた成果は学会や論文にて発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
資材の輸入の遅れなどによって一部予算の繰り越しなどが必要となったが、実験の進行・成果の発表などに関してはおおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、アポトーシス細胞模倣型高分子、PS基含有高分子(2-Methacryloyloxyethyl phosphorylserineポリマー ; 以下、MPSポリマー)をin vivoで投与しやすい形状に設計する。作製した粒子(ミセル)の硬さなどもミクログリア細胞の取り込みに影響を示すことが予想されるため、ポリマーのガラス転移点などを詳しく評価していき、剤系と抗炎症作用との関連を明らかにしていく。本研究課題で開発するMPS粒子の脊髄損傷治療薬としての可能性を明らかにする。
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