研究実績の概要 |
脊髄損傷は損傷後時間経過とともに病態が複雑に変化するため、それぞれの時期にそれぞれの病態に即した適切な治療が必要になる。特に後遺症の低減を考えた際、脊髄の外傷自身よりも、その後起きる二次損傷をなるべく早期に抑えることが優先すべき治療となる。こうした背景のも と、抗炎症薬によって炎症を一過的に止めるのではなく、免疫細胞のフェノタイプを傷害・炎症型(M1型)から保護・抗炎症型(M2型)に誘導 することで、免疫細胞による自然治癒促進効果を狙うアプローチが注目されるようになってきた。そこで本申請課題では、免疫細胞をM1型から M2型への誘導可能な新規高分子材料の設計をおこなった。特に、生体内で日常的に起きている炎症を伴わない細胞死アポトーシス現象に着目し、ア ポトーシス細胞模倣型高分子を用いた神経組織の二次損傷の抑制を目指した。特に当該年度では、アポトーシス細胞模倣型高分子、PS基含有高分子(2-Methacryloyloxyethyl phosphorylserineポリマー ; 以下、MPSポリマー)をin vivoで投与しやすい形状に設計した。作製した粒子(ミセル)の硬さなどもミクログリア細胞の取り込みに影響を示すことが予想されるため、ポリマーのガラス転移点や粒子密度を示差走査熱量測定(DSC, Differential Scanning Calorimetry)や粒子/分子分離システム(FFF , Field Flow Fractionation)などを用いて解析した結果、粒子密度の高いものやコア部分の弾性率が高いものがより多くミクログリア細胞に取り込まれることが確認できた。しかしながら、血中滞留性やマクロファージによる貪食などを考えた際に、表面の親水化は重要な要因となるため、血液適合性の高いフォスファチジルコリン基の導入も行った。動物モデルでは、PPARγ(ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ)の活性化が確認できた。
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