研究課題/領域番号 |
19H04477
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
小林 尚俊 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 非常勤講師 (90354266)
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研究分担者 |
橋本 良秀 東京医科歯科大学, 生体材料工学研究所, 助教 (40638384)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 脱細胞足場 / 角膜再生 / メカニズム |
研究実績の概要 |
In vitro 培養系における上皮細胞と脱細胞化角膜実質足場の相互作用の検討を継続した。 超高圧処理により作製した脱細胞角膜実質足場を長期還流培養に用いる足場を固定する治具に組み込んだ状態で角膜上皮細胞を播種し、上皮細胞の生着状態を安定化させるため、静置培養を行った後に、還流培養用の装置へ移行し組み込み、上皮化の進行状況を観察する手法を確立した。具体的には、静置培養における細胞播種数の最適化により、20000cells/cm2とかなりの高濃度で上皮細胞を播種する必要があった。還流培養装置への細胞播種済み脱細胞角膜の仕込みのタイミングの検討では、1週間ほどの静置培養が必要であることが判明した。また、還流培養の培養液の還流速度などの検討を行い、2.0ml/hrの流速での還流培養で問題なく長期培養を行うことができることを確認した。 豚から作成した脱細胞化組織を人に埋入する場合の超急性期の免疫拒絶を引き起こすとトリガーとしてのαGALの有無が問題となってきたため、脱細胞化角膜の再生のメカニズムの一つとして、αGALの除去が適切に行われているかを評価した。この結果、脱細胞化処理を行った角膜実質組織では、αGALの消失が確認されて、急性期の免疫拒絶は起きにくい材料であることが分かった。 また、脱細胞化の際に用いる試薬を工夫することで、これまで初期的に不透明であった脱細胞化組織を移植直後から透明性が高くなるように改良を加えた。この処理法を変えた脱細胞化組織の安定性、安全性などの探索も懸案となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
長期培養や動物実験など、継続性が問われる実験であるため、コロナの影響を受け実験開始が大幅に遅れた。コロナ収束が見通せないこともあり、当初計画より短めで、研究手法を変更するなどの手配を進め、少しずつ軌道にのりつつある。
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今後の研究の推進方策 |
還流培養系でエアリフトをトリガーとして分化誘導を行い、多層上皮化を試みる。また、多層上皮が形成できたら、スクラッチ法を利用して、角膜上皮層の連続性を壊し、再上皮化の挙動をタイムラプス顕微鏡などを用いて観察し、脱細胞化組織上の上皮の再生メカニズムを検証する。さらに、脱細胞化組織と上皮細胞の境界部分における構造変化も合わせて評価する。当初、動物モデルをウサギとして行う予定であったが、実験施設における数の制約もあるため、ラットなど小型動物でのモデルが組めないか探索するとともに、In Vitroの実験系を中心に研究を進める。また、実用化においては、滅菌工程が避けて通れない問題であることは明白なので、滅菌法の脱細胞角膜足場の再生に及ぼす影響などを探索することで新たな側面から再生メカニズムに関する知見を集積する。
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