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2020 年度 実績報告書

Ai(死後画像)をAI(人工知能)で診断する

研究課題

研究課題/領域番号 19H04479
研究機関東北大学

研究代表者

舟山 眞人  東北大学, 医学系研究科, 教授 (40190128)

研究分担者 本間 経康  東北大学, 医学系研究科, 教授 (30282023)
研究期間 (年度) 2019-04-01 – 2022-03-31
キーワード死後画像診断 / 溺死 / 深層学習 / 人工知能 / 交差検証法
研究実績の概要

端的に述べれば死後画像撮影(Ai)施行後に死因診断が下された症例において、注目臓器の画像データに対し深層学習(deep learning)を利用することにより、コンピュータ支援画像診断(computer-aided diagnosis, CAD)システムの構築を目指すことにある。本研究では注目臓器に肺を選択し、法医解剖症例の多い溺死診断を目標に据え、頚部圧迫による窒息、心臓性突然死、薬物中毒など肉眼的にどれも類似した肺うっ血・水腫所見の中から溺死肺が抽出できるかどうか、即ち“溺死肺”の読影診断にAIがどの程度まで貢献出来るのかを検討しようというものである。
これまでの研究において、確実に溺死と判断できる153例(画像4242枚)、ならびに対照とする非溺死例173例(画像4831枚)を抽出、深層学習として畳み込みニューラルネットワークの一つであるAlexNetを使用、計算はNVIDA GeForce GTX 1080 TiGPU を搭載したワークステーション上で行った。一施設における法医画像のAI研究への問題は、データ数が少ないことである。従って、本研究では信頼性を高める工夫として、訓練用と評価用の症例の組を入れ替える交差検証を行った。10分割交差検証後、各回での結果を2×2表の2クラス分類判定を行うと、真陽性率(感度)が0.58~0.91、特異度が0.75~0.91となった。全体の評価指数として信者動作特性(receiver operating characteristic: ROC)曲線の曲線下面積(area under the curve: AUC)を計算したところ、10回の平均は0.92となった。また個々の画像単位での検討を行ったところ、平均AUCは0.86と若干低下した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

AUC は0~1の値を取り、1に近いほど分類性能が高い(ランダムは0.5)。医用画像の場合、有効な分類器の1つの目安はAUC が0.8以上とされる場合が多く、0.9 以上だと熟練の専門医による鑑別に匹敵するか凌駕する場合が多いとされている。よって、AUC0.92は極めて良好な結果であるといえよう。2019年度の結果からAUC値が上昇した理由として、このときの抽出症例には外表検査のみで解剖されていないもの、死後変化(腐敗)が進行しているもの、長時間の救急蘇生例が行われているものなどが含まれていた。そこで2020年度では法医経験40年の研究者自身が溺死例に関して全例、解剖写真を含めた剖検記録にあたり、確実に溺死と判断できる症例のみを抽出した。また、対照とする非溺死例も全て剖検症例を見直した。AI診断の成否は訓練用(教師)データの質によるところが大きいと言われているが、本研究結果もその通りとなっている。なお、画像単位でのAUC値の低下に関し、同単位での診断は、それを構成する個々の画像診断の“多数決”によるため、値が低く出るのは当然であり、研究手法自体の問題ではないと考える。

今後の研究の推進方策

これまでの研究によって、溺水診断補助にAIが有力な手立てであることがわかった。その上で、偽陽性例(非溺死例で溺死と診断)での胸部画像の細検討を行う予定である。法医解剖例には時に偽装殺人が含まれているが、この中に、たとえば頚部圧迫後に水中に投棄し、溺水にみせかけるという事例がある。窒息例では肺水腫が生じることが多いが、これを溺死肺と誤診することは、犯罪の見逃しに法医が“荷担”することになってしまう。従って、AIでは偽陰性例(溺死例を非溺死と診断)が多少増えたとしても、偽陽性診断をできるだけ少なくする必要があるためである。たとえば、AIの診断根拠を提示する、いわゆる説明可能性の向上もその一つである。画像のうち、AIがどの部分を重視して分類を行ったか、あるいは画像の特定部位がどの程度分類に貢献したかを計算する手法等が有力であり、その解析と提示方法を開発中である。もう一つはこの研究結果に基づいたリアルタイム診断プログラムの開発である。これはAiセンターで撮影された死体の胸部画像をパーソナルコンピュータに入力、短時間で診断結果が得られるのを目的とする。すでに開発を進めており、2021年度中に実用化をめざす。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2020

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 2件)

  • [雑誌論文] A Deep Learning Aided Drowning Diagnosis for Forensic Investigations using Post-Mortem Lung CT Images2020

    • 著者名/発表者名
      Homma Noriyasu、Zhang Xiaoyong、Qureshi Amber、Konno Takuya、Kawasumi Yusuke、Usui Akihito、Funayama Masato、Bukovsky Ivo、Ichiji Kei、Sugita Norihiro、Yoshizawa Makoto
    • 雑誌名

      Proc. EMBC

      巻: 2020 ページ: 1262-1265

    • DOI

      10.1109/EMBC44109.2020.9175731

    • 査読あり
  • [学会発表] 溺死例の肺CT画像をAI(人工知能)で解析する2020

    • 著者名/発表者名
      舟山眞人、本間経康他
    • 学会等名
      第104次日本法医学会全国学術集会
  • [学会発表] CIの医学応用とモデリング2020

    • 著者名/発表者名
      本間経康
    • 学会等名
      計測自動制御学会システム・情報部門学術講演会
    • 招待講演
  • [学会発表] 深層学習との共創が拓く医用画像診断の深化2020

    • 著者名/発表者名
      本間経康
    • 学会等名
      コンピューテーショナル・インテリジェンス・フォーラム2020
    • 招待講演

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公開日: 2021-12-27  

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