研究実績の概要 |
本研究は死後画像撮影(Ai)施行後に死因診断が下された症例において、注目臓器の画像データに対し深層学習(deep learning)を利用することにより、コンピュータ支援画像診断(computer-aided diagnosis, CAD)システムの構築を目指すことにある。 本年度は肺に特徴的な所見(乾燥感)が生じる低体温症に注目した。剖検で凍死あるいはその疑いと診断された群と対照群として溺死を除いたものを抽出、それぞれ訓練93例とテスト23例にわけ、深層学習にはVGG16深層たたみ込みニューラルネットアーキテクチャを用いて解析した。性能比較として同じくAUC を算出したところ、0.96と極めて良好な結果が得られた。即ち、溺死と同様、死亡時の低体温症の診断においても、CT画像からのAI解析は、極めて有力な診断補助になりうることがわかった。このことは殆ど死後画像読影の経験がない医療関係者でも、AIを用いることで、死亡時低体温症であったという判断を容易に下すことが可能であることを意味する。また本研究では“診断確率”を各症例で算出可能でであり、症例ごとに死因の可能性・蓋然性を数的に表現可能である。 加えて今回の結果に基づき解析・診断用プログラムを作成した。使用言語はPythonである。実際の運用には、胸部ノンヘリカル画像をDICOM形式に変換、これをまとめて(原則24枚/症例)、ラップトップパソコン内の指定フォルダにペーストする。後は自動的に低体温症である確率を各スライス単位と全スライスを合わせた平均値とで算出できるようにした。計算時間は約3分である。なお、複数症例(複数フォルダ)をまとめて処理可能であり、遡った検討にも容易に対応できる。
|