研究課題/領域番号 |
19H04482
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研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
山口 匡 千葉大学, フロンティア医工学センター, 教授 (40334172)
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研究分担者 |
長谷川 英之 富山大学, 学術研究部工学系, 教授 (00344698)
吉田 憲司 千葉大学, フロンティア医工学センター, 准教授 (10572985)
林 秀樹 千葉大学, フロンティア医工学センター, 教授 (20312960)
小玉 哲也 東北大学, 医工学研究科, 教授 (40271986)
丸山 紀史 順天堂大学, 医学部, 准教授 (90375642)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 超音波 / 定量診断 / 標準化 / 無侵襲 / 病理診断 |
研究実績の概要 |
山口がこれまでに独自開発してきた生体模擬ファントムを中心的な対象として、自身が構築した超高帯域超音波計測システムと複数の単一超音波振動子を用いて、広い周波数帯域における生体音速の周波数依存性について評価した。当初の対象としてはラットの肝臓およびマウスのリンパ節を中心的に想定していたが、コロナ禍の影響を受けて動物実験を最小限としたため、数例の肝臓を評価するにとどめた。しかし、少数規模での実験ではあるが、ファントムおよび均質な生体組織と疾患を有する生体組織では周波数依存性が異なることを確認した。 また、リンパ節の性状診断については、実験動物の運搬などを避けるため、東北大学において生体を対象としたエコーデータの収集および解析を実施し、千葉大学において摘出組織を対象とした超高周波超音波による音響特性評価を行うことで、生体内のリンパ節におけるがん転移による組織変性と散乱特性および音響特性との関連性について検証した。 加えて、超音波エラストグラフィにおける横波音速評価の安定性および不安定要素について、計算機シミュレーションによる検証を行った。ここでは、上記の肝臓の音響特性を考慮した生体モデルを対象としており、臨床で使用される超音波診断装置における横波評価法を計算機内で再現した。その結果、極めて微小な脂肪滴や線維組織であっても、横波の伝搬には大きな影響を及ぼし、組織構造の複雑性と評価の安定性の間には強い相関があることが確認された。 これらの結果および各種の超音波定量診断アルゴリズムを臨床用装置に実装するための準備として、超音波開発用プラットフォームへのソフトウェア実装準備を始めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
生体組織の音響特性評価について、ラット・マウスを対象とした新規の計測および評価は想定よりも少数の個体のみで実施したものの、これまでに蓄積したデータとの整合について検証しながら進めることができた点と、評価用試料の作成法について見直しができた点は想定以上の成果であった。 また、エコー信号を対象とした散乱特性評価についても、これまでに提案してきた手法について生体模擬ファントムを用いた精度検証などが十分に達成できており、上記の音響特性との関連性を検討するに十分なデータを得ることができた。併せて、超音波エラストグラフィの安定性および不安定要素の検証についても想定以上の成果が得られており、これらの成果は3編の学術論文として採択されている。 一方で、簡易なシステムで高速に生体内深部を観察可能なシステムの開発については、海外企業に作成を委託しているパルサーレシーバ―の構築がコロナ禍の影響で遅れ、年度内には納入できないことになった。しかし、代表者の所属部局に新規に導入された超音波開発用プラットフォームを用いた検討を並行して行うことで、パルサーレシーバ―納入後の作業がスムーズになるように準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに集積した疾患モデル動物の肝臓およびリンパ節の音響特性の解析結果について、病理学的特徴やエコー信号解析の結果などとリンクさせて評価を行う。また、音響特性評価に用いる生体試料の取り扱い法の見直し結果を反映し、そのプロトコルに沿った条件での音響特性の再解析も実施する。また、独自開発している生体模擬ファントムでの検証も引き続き検討する。 コロナ禍の影響で導入が遅滞している新規開発のパルサーレシーバ―と独自開発のアニュラアレイセンサを用いての高速なデータ収集システムについて、機器の納入後に速やかに実施し、上記の動物およびファントムでの検討に応用する。 併せて、丸山との連携により、昨年度に千葉大学に導入した開発用の超音波プラットフォームで収集可能なエコーデータにおける検討も行い、生体内組織のエコー信号が有する振幅特性や周波数特性と生体外組織の音響特性とを広い周波数帯で密接に関連付ける。
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