研究課題/領域番号 |
19H04483
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
有元 誠 金沢大学, 先端宇宙理工学研究センター, 助教 (40467014)
|
研究分担者 |
小林 聡 金沢大学, 保健学系, 教授 (30313638)
片岡 淳 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (90334507)
|
研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | X線CT / フォトンカウンティング / デュアルエナジーCT / MPPC / in vivo イメージング |
研究実績の概要 |
本年度では、主にファントムを用いて、我々が独自に開発したMPPCをベースとしたフォトンカウンティングCTシステムおよび、臨床で用いられているデュアルエナジーCTシステムで得られたCTイメージの定量評価を、前年度に引き続き実施した。そしてプラチナやヨードなどの混合造影剤に対し物質同定に加え、個々の濃度まで正確に推定することに成功した。さらに、これまではフィルター補正逆投影法を用いた画像再構成であったが、本年度では新たに逐次近似法を導入したCT画像の再構成を実施した。その結果、CT値の誤差をおよそ40%低減させることに成功した。これにより、独自に開発したフォトンカウンティングCT装置が従来型の臨床CT装置に対して、同等もしくはそれを凌駕するノイズ性能をもつことがわかった。これは将来のドラッグデリバリーシステムの治療効果の可視化を目指す上で極めて有用であり、造影剤や薬剤の分布を低濃度の領域まで把握できると期待される。 さらに本年度の大きな前進として、小動物(マウス)を用いた「初の in vivo イメージング」が挙げられる。ヨードやガドリニウムをマウスに静脈投与し、フォトンカウンティングCTの大きな利点であるK吸収端エネルギー前後でのCT画像を取得した。そして、異なるエネルギーのCT画像の間で差分をとることで、マウス体内でのヨードやガドリニウムの分布を映し出すことに成功した。さらに、投与した造影剤の3次元での濃度分布の推定にも成功し、推定によって得られた造影剤の総量は実際の投与量と無矛盾であることがわかった。さらに金ナノ粒子などのイメージングを現在行っており、次年度ではこれらの結果についてとりまとめ、報告を行う予定である。また本年度の成果について学生2名が学会発表を実施し、優秀講演賞を受賞した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
独自に開発したフォトンカウンティングCT装置とデュアルエネルギーCT装置(金沢大附属病院に設置された臨床装置)のファントムを用いた比較研究では、コロナ禍の中でありながらも研究分担者および協力者のメンバー(小林、川嶋ら)の協力により、臨床装置を利用した研究をスムーズに行うことができた。 また昨年度は実施できなかった in vivo イメージングについても、金沢大学がん進展制御研究所のメンバー(村上ら)の協力によって、小動物を利用した研究環境を遅滞なく構築することで、in vivo 画像を取得できた。
|
今後の研究の推進方策 |
ファントムでの比較研究およびin vivo イメージングの研究結果については、現在学術論文誌への投稿に向け執筆を進めており、次年度以降での成果公開を目指す。さらに次世代のドラッグデリバリーシステムの可視化に向け、金ナノ粒子を用いた造影剤の in vivo イメージングを実施し、物質同定や濃度推定を行っていく。加えて、独自に開発したフォトンカウンティングCTシステムでは、現在CTのみならずMRIなどでも利用されている様々な造影剤をイメージングできることが期待される。そこで例えば、肝臓の組織に分布しやすいガドリニウムを含む造影剤のイメージを、フォトンカウンティングCTとMRIの双方で取得する。そして得られた画像を比較することで、X線CT以外の様々なモダリティとの同時イメージングに関する相乗効果について評価を進める。このようにX線CTという単一の枠組みを超えて、様々なモダリティとの親和性や有用性についての検討を定量的に進めていく。
|