研究課題
【研究目的】近赤外蛍光色素の一種インドシアニングリーン(以下,ICG)を用いた蛍光ナビゲーションは,癌治療や冠動脈バイパス手術などでその有用性が確認されている。しかし,ICGは至適濃度範囲の狭さや蛍光強度の低さが,深部に存在する患部の標識を困難にしている。また,水溶性であるICGの易拡散性は,患部の正確な位置の特定を困難にする最大の欠点となっている。このような技術課題を解決するべく研究代表者は,樹脂に高温高圧で溶融混練することのできる新規の近赤外蛍光色素および増感剤の開発を進め,画期的な近赤外蛍光樹脂材料の開発に成功した。さらに,この樹脂片は,組織内部深さ20mmに留置されても組織表面から,十分かつ明瞭に可視化できる(量子収率58%,褪光性5%未満/年)ことを確認した。本研究では,この材料を用いてナビゲーション用標識具の開発を図る。【本年度の研究実績】術前に経膀胱鏡的に逆行性に尿管内に留置可能であり,かつ鏡視下手術中に,後腹膜脂肪組織表面から位置を特定することができる尿管カテーテルを開発した。①材料:粘膜刺激のない医療用熱可塑性ポリウレタン(Medical Grade USP VI)に,近赤外蛍光色素MNIR-6を溶融混練し,φ2mmのチューブを押出成形した。②先端の成形:長さ600mmのカテーテルを作成し,一方の端に熱を加えピッグテイル状に成形した。③押出成形時の温度管理の最適化に成功し、蛍光輝度の劣化を抑制することに成功した。④当該技術に関する特許出願を2件行うことができた。
2: おおむね順調に進展している
粘膜刺激のない医療用熱可塑性ポリウレタン(Medical Grade USP VI)に,近赤外蛍光色素MNIR-6を溶融混練し,φ2mmのチューブを押出成形し、先端をピッグテイル状に成形することに成功した。成形時の温度管理を厳格に行うことにより、蛍光活性の劣化を抑制することができた。
気管支鏡で区域気管支に留置できる近赤外蛍光樹脂製有棘チューブの試作を予定している。術前に,気管支鏡を用いて患部または,患部区域肺気管支に留置可能であり,かつ,鏡視下手術中に,臓側胸膜から位置を特定することができる有棘チューブを開発する。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 5件) 産業財産権 (2件) (うち外国 1件)
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