研究課題/領域番号 |
19H04489
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
中島 雄太 熊本大学, 大学院先端科学研究部(工), 准教授 (70574341)
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研究分担者 |
藤原 章雄 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 講師 (70452886)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | がん検出 / リキッドバイオプシー / バイオマイクロデバイス / バイオセンサ |
研究実績の概要 |
本年度当初は、昨年度に引き続き、各部位のがん環境下での細胞の動態と応答特性を評価することを目的とし、細胞が産生するサイトカインや発現するたんぱく質などを評価した。具体的には、卵巣がん、肺がん、胃がん、腎臓がん、大腸がんの培養上清を回収し、回収した上清を細胞の培養液に添加することによって、細胞を疑似的にがん環境中で培養した。昨年度の結果と同様に、がん種によって産生されるサイトカインに違いが出ることが示唆されたが、実験毎に多少のバラツキが存在することが明らかになった。本検証は本研究を推進する上で重要な部分であるため、次年度も実験回数を増やし再現性を確認すると共に統計学的有意差などを用いて評価を進める予定である。 また、年度後半には、検出用デバイスの構築を開始した。デバイスはフォトリソグラフィを主としたマイクロ加工技術を用いて製作した。本デバイス上で培養した細胞は顕微鏡での観察などを行うため、顕微鏡での観察を考慮して透明のPDMS構造体とガラス基板から成るデバイスを製作した。デバイス内での細胞の接着性を向上させるため、フィブロネクチンをコーティングした。デバイス内にセンシング用の細胞を播種し1日間静置培養を行ったところ、デバイス内に強固に接着し培養できることを確認した。さらに、構築したデバイス内にセンシング用細胞を培養し、そのデバイスに卵巣がん細胞の培養上清を導入した。この際、センシング用細胞が応答して産生するサイトカインをELISAにより、発現したたんぱく質を蛍光免疫染色により評価した。その結果、デバイスを用いた評価でも事前検証と同様の応答を示すことを明らかにした。また、デバイスを用いることで効率的に産生物質を検出できることも明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、複数種類のがん部位の細胞を培養し、その上清を基にしてセンサ細胞から産生されるサイトカインや発現するたんぱく質、細胞形態の評価を行った。また、検出用デバイスの構築も行い、予定通りセンシング用細胞のデバイス内での培養とセンシング用細胞が産生する物質の評価も行うことに成功した。上記の通り当初の計画を着実に実行しており、次年度も計画に沿った研究推進が可能であることから、今年度の達成度はおおむね順調であると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本年度も継続して、がん環境にさらされた細胞が産生するサイトカインや発現するたんぱく質、細胞形態を明らかにする。これまでに、ヒト卵巣がん由来の細胞を用いた検証を行ってきたため、本年度は、他の部位のがん細胞を用いた検証を実施する。具体的な方法は昨年度と同様に、培養中の細胞の培養上清を回収してその上清をセンシング用細胞の培養液に添加する。これにより細胞を疑似的にがん環境中で培養する。この培養センシング用細胞の観察やELISAでの上清評価、ウェスタンブロッティングでの評価を行うことにより、がん種に対する細胞応答の違いを明らかにする。本検証で得られたデータは、がんの原発巣を特定するための基礎データとなり、これらの結果を基にして検出用デバイスの設計指針やがんの原発巣の判定指針を設定する。 また、前年度に続き、センシング用細胞の培養デバイスの機能向上・最適化、検証を行う。デバイスはフォトリソグラフィを主とするマイクロマシニング技術を駆使して製作する。構築したデバイス内でセンシング用の細胞を均一に培養できる構造を検討し、デバイス内でセンシング用細胞の均一培養と産生物の抽出が可能であることを実証する。構築したデバイス内にセンシング用細胞を培養し、そのデバイスにがん細胞の培養上清を導入することによって、センシング用細胞を刺激する。この際に細胞から産生された産生物を回収しELISAで検証する。さらに、QCMを用いることにより、細胞の産生物質をリアルタイムで検出・評価するための検証実験を行う。具体的にはQCMの電極上に抗体を修飾し、そこにリコンビナントの抗原を送液することによってリアルタイム検出が可能であることを実証する。この際、濃度条件を複数設定することにより検出範囲を明らかにする。
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