本研究では、がんの原発巣を特定することが可能なリキッドバイオプシーの実現を目指し、細胞を「がんを見つけるセンサ」として活用するがん診断デバイスを実現することを目的として研究を推進する。本年度は、水晶振動子マイクロバランス(QCM)を用いたサイトカインの検出評価を行う。昨年度までに、QCMの電極上に抗体を修飾し、そこにリコンビナントの抗原を送液することによってリアルタイム検出が可能であることを実証したが、検出対象のターゲット物質を検出するためのシグナルが小さく、感度を向上する必要があることがわかったため、シグナル増幅する方法について検証した。具体的には、磁性粒子を用いた方法や、ELISAで用いる検出用HRPを用いた方法などを行うことによりシグナルの増幅を試みた。その結果、10 ng/mLの濃度のターゲット抗体をリアルタイムで検出することに成功した。 また、センシング用細胞の培養デバイスについては、PDMS構造体での製作が完成し、デバイス内での細胞培養に成功したが、デバイス内での細胞の密度や分布に改善が必要であることが課題であった。そのため、デバイス表面へのO2プラズマ処理やフィブロネクチンのコーティング、細胞膜アンカーの修飾などを最適化することにより、細胞数の分布がなく均一に培養することができた。このデバイスにがん細胞の培養上清を導入し、センシング用細胞から産生されるサイトカインを評価した。比較実験として、通常の培地を導入したコントロール(C)実験とLPSを導入したポジティブコントロール(PC)実験を行った。その結果、がんの上清を検出することに成功し、ELISAでの評価結果とも相関が得られた。この結果は、構築したデバイスでがんを検出可能であることを実証した。
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