研究課題/領域番号 |
19H04492
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
村石 浩 北里大学, 医療衛生学部, 准教授 (00365181)
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研究分担者 |
榎本 良治 東京大学, 宇宙線研究所, 准教授 (80183755)
片桐 秀明 茨城大学, 理工学研究科(理学野), 准教授 (50402764)
加賀谷 美佳 仙台高等専門学校, 総合工学科, 助教 (10783467)
加納 大輔 国立研究開発法人国立がん研究センター, 東病院, 薬剤師 (70392347)
石山 博條 北里大学, 医学部, 教授 (60343076)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 医用放射線応用 / 放射線計測学 / 医用画像情報工学 / 放射線防護 / コンプトンカメラ |
研究実績の概要 |
本研究では、医療現場における100keV~数MeVγ線を放出する低線量放射線源を遠隔から高感度で撮影可能なコンプトンカメラ技術開発を独自に遂行中である。2019年度(1年目)における主な実績は以下の通りである。 (1)核医学分野における新しい医療評価指標の開発(511keVγ線):PET患者が排泄した便器内の尿中放射能を遠隔から測定可能な8ch型コンプトンカメラを製作した(CsI(Tl)結晶(1cm角)、メタルパッケージPMT(TO-8)を使用)。国立がん研究センター東病院核医学施設PET患者専用トイレ内で測定を行った結果、便器内の尿中放射能を0-150MBqの広範囲に渡り10秒以内で測定可能であることを実証した(第59回日本核医学学会学術総会で報告)。 (2)放射能汚染監視モニターの開発(100-250keVγ線):CaF2(Eu)結晶を用いた4ch型コンプトンカメラを開発し、実際の核医学施設での測定試験の結果、低エネルギーγ線放出放射性医薬品(Tc-99m(141keV)、In-111(171,245keV))による汚染箇所の可視化が可能であることを実証した(国際学術雑誌に論文投稿中)。 (3)高感度全方向γ線イメージングのデモ:アメリカの学術雑誌JoVEより動画論文作成依頼を受け、11ch型コンプトンカメラ(3.5cm角CsI(Tl)を使用)を用いた低線量放射線源の可視化に関するレビュー論文を執筆した。動画撮影は、北里大学、及び同病院核医学施設で行われ、現在、webで公開中である(4/21現在の動画再生回数:1505件)。 (4)γ線画像の高精度化:結晶配置を工夫した6ch型コンプトンカメラを自動回転ステージに搭載し回転させながら測定することが可能なシステムを構築し、シフトインバリアントな全方向γ線イメージングが容易に達成可能であることを実証した(論文投稿準備中)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1年目である2019年度においては、当初の予定通り、PET患者が排泄した尿中放射能の遠隔イメージングを実現し、更に、Tc-99mなどの低エネルギーγ線放出放射性医薬品による汚染イメージングの可能性についても実証することができたことから、順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度(2年目)以降においては、まず、2019年度(1年目)において構築した511keV向け高感度コンプトンカメラ技術に改良を加えた後、国立がん研究センター東病院核医学施設内PET患者専用トイレに常時設置することで、PET患者が排泄した尿中の放射能の常時連続モニター測定を継続して展開する。2019年度後半に行った実際の設置試験により得られたデータをもとに、検出器の感度調整、データ転送システムの最適化、及び新しい尿中放射能自動計測アルゴリズムの開発を遂行しフィードバックすることで、2020年度中に300症例に渡る尿中放射能の精密測定データの取得を目指す。更に、取得されたデータを実際のPET診断画像に組み込むことで、がん患者の治療評価判定への影響の可能性について調査研究を順次開始する。 次に、核医学施設で頻繁に使用される100~200keV程度の低エネルギーγ線を放出するTc-99mなどの放射性医薬品による汚染箇所の可視化モニタリングの可能性について積極的な臨床試験を展開する。2019年度の予備実験において、CaF2結晶をカウンターとするタイプのコンプトンカメラによりイメージングが可能な結果を見出したため、2020年度は、2019年度使用した大型の光電子増倍管(H11432-100、浜松ホトニクス(株))に代わり、小型のメタルパッケージ型光電子増倍管、及びマルチピクセルフォトンカウンター(MPPC)を用いることで、検出器の小型化や遮蔽の減少による感度向上を実現する。カウンターテスト、及び検出器配置の最適化を順次遂行し、病院において、実際の放射性医薬品による汚染を想定したイメージング試験を展開する。 更に、放射線治療施設や加速器施設向けの>1MeVγ線コンプトンカメラのためのカウンターコンポーネントの検討を順次遂行する。
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