研究実績の概要 |
がん原発巣から血管中に遊離して血中を循環し遠隔臓器での転移巣形成に働き、予後や治療効果の判定に利用できる血中循環がん細胞 (Circulating tumor cell, CTC) を対象に、CTCを正確な定量検出に応用できる多重免疫染色が可能な平板全面細胞単層配列法、さらに標的一細胞を回収できる細胞ピンセットの開発を行う。平板なスライドガラス大のポリスチレン製基板上で基板全面に約1,500万個単位の白血球を単層配列後、上皮マーカーを含む免疫多重染色を行うことでがん細胞の多様性に対応できるCTCの定量検出と、一細胞レベルでの位置特定化が可能な基板を作成する。またCTC中に含まれ遠隔臓器で分化・増殖の中心的役割を働くがん幹細胞を、CTC検出と同時に試みる。 CTCは血液中で短時間でアポトーシスにより死滅すると考えられるが、CTC中にごく一部存在するがん幹細胞は遠隔臓器に定着・増殖することで転移巣を形成すると考えられる。幹細胞検出マーカーとして複数のタンパク質が報告されているが、開発する平板基板では、免疫多重染色が容易で、CD133など複数のマーカー候補を用いた染色を行いCTCからがん幹細胞の一細胞レベルでの検出を行う。 さらに、位置特定化されたCTCの回収を目的に、微細加工技術を用いて細胞用ピンセットの開発を進める。標的とするがん細胞を一細胞レベルで回収することで、遺伝子発現解析や細胞機能解析が可能となり、強力ながん診断デバイスになる。
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