研究課題/領域番号 |
19H04498
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
秋山 いわき 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (80192912)
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研究分担者 |
市川 寛 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (60336732)
池川 雅哉 同志社大学, 生命医科学部, 教授 (60381943)
吉岡 正裕 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 計量標準総合センター, 研究グループ長 (60358322)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 超音波照射 / メダカ胚 / SWATH解析 / プロテオーム解析 / 抗酸化作用 / ラット筋萎縮 / 骨格筋細胞 / 酸化ストレス |
研究実績の概要 |
本研究は超音波診断で安全性の側面から規制されている範囲内の超音波出力によって,生体が受ける作用について細胞・動物実験を行ない,生物の発生と成長への影響を調査・検討し、安全性を評価することを目的とする.本研究では次の2つの手法に分けて実施した。ひとつは、超音波照射されたメダカ胚を用いて発生・成長へ影響を与えるタンパク質を網羅的プロテオーム解析によって明らかにすることである。もうひとつは、超音波照射が「酸化ストレス」を介した機序でどのような影響を生体に及ぼすかをあきらかにする。そのために、骨格筋細胞およびラットを用いた、in vitroおよびin vivoの手法による実験を実施する。 今年度は超音波照射がメダカ胚に影響を与えるタンパク質を網羅的に同定するために、SWATH解析を行った。 次に、超音波照射が「酸化ストレス」を介した機序でどのような影響を生体に及ぼすかを明らかにするために、C2C12より分化させた骨格筋細胞に対し、超音波を暴露させた場合の、細胞内及び培地内に産生される過酸化水素およびヒドロキシルラジカルを定量し、前述のタンパク合成増強、タンパク分解抑制の条件に一致する超音波照射条件を設定した。 次に、ラット後肢テープ固定モデルを用いた。作成動物モデルは、無負荷条件(Control)とテープ固定(Casting)条件の2条件に分け、サージカルテープにより片側後肢の膝関節および足関節を1週間固定した。同時に、下肢への超音波照射の介入を行った。下肢屈筋群のうち、主に遅筋線維から構成されるヒラメ筋(Soleus)及び、主に速筋線維から構成される足底筋(Plantaris)を被験筋とし、筋を摘出後、速やかに筋湿重量を計測し、筋萎縮に対する超音波照射の予防効果を評価した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
超音波照射がメダカ胚に影響を与えるタンパク質を網羅的に同定するために、SWATH解析を行った。適切な超音波暴露により増強したタンパク合成が、各種抗酸化物質により減弱することを確認した。さらに、筋萎縮促進作用のあるデキサメサゾンの24時間前処置により変化したタンパク合成及び分解バイオマーカーに対し、超音波照射が及ぼす影響を評価した。骨格筋細胞に動物実験としては、ラット後肢テープ固定モデルを用いた。作成動物モデルは、無負荷条件(Control)とテープ固定(Casting)条件の2条件に分け、サージカルテープにより片側後肢の膝関節および足関節を1週間固定した。同時に、下肢への超音波照射の介入を行った。
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今後の研究の推進方策 |
超音波照射がメダカ胚に影響を与えるタンパク質を網羅的に同定するために、メダカ初期胚を対象としたプロテオミクスの手法としてSWATH解析を導入した。超音波照射の条件は、周波数が1.0MHz、音圧が100 kPa、500kPa、1.0 MPaの3種類、照射時間が60 sである。音圧に関する超音波診断の規制値は1.0 MHzで1.9 MPaであるので、いずれも下回っている。また、強度はそれぞれ330 mW/cm2、8.3 W/cm2、33W/cm2である。なお、強度に関する規制値は720 mW/cm2である。メダカ胚プロテオミクスの結果600から700種余りのタンパク質を一胚から分離同定に成功した。さらに超音波無照射の胚と比較してマンホイットニーU検定により、存在量に差の認められたタンパク質は30種程度であった。今年度はこの中からヒト安全性についての考察を行うため、胚発生において重要なタンパク質を絞り込み、抗体を用いたウェスタンブロッティングなどによって検証を行う予定である。 一方、サルコペニアの発症には酸化ストレスが強く関与していることは周知の事実であり、抗酸化食品因子の投与によるサルコペニアの予防の可能性がすでに示唆されている。本年度は、超音波照射のサルコペニア予防の機序が生体の抗酸化能増強作用によるものであると仮定し、以下の実験を勘案している。すなわち、C2C12より分化させた骨格筋細胞を長期培養および炎症性サイトカイン共存下において培養した場合、経時的に筋萎縮を起こすことを確認しているが、本モデルに対し超音波照射を介入させサルコペニアの予防効果を確認するとともに、超音波照射による骨格筋細胞の抗酸化能の増強作用を確認する。細胞の抗酸化能の評価には、ESRスピントラップ法を用いて、6種類の活性酸素・フリーラジカル消去活性を定量化することにより評価する予定である。
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