研究課題/領域番号 |
19H04501
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
藤原 幸一 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (10642514)
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研究分担者 |
久保 孝富 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 特任准教授 (20631550)
加納 学 京都大学, 情報学研究科, 教授 (30263114)
山川 俊貴 熊本大学, 大学院先導機構, 助教 (60510419)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 熱中症 / ウェアラブルセンサ / 心拍変動 / 機械学習 |
研究実績の概要 |
熱中症とは,暑熱環境で発生する障害の総称であり,毎年,初夏以降に多くの救急搬送者や死者が発生するが,症状が軽いうちに適切に対処することで重症化を避けることができる.そこで本研究は,熱中症の発症段階で警報を発報できる熱中症アラームの開発を目指し,研究開発を実施した.これまでに自律神経活動を反映する生体現象である心拍変動(HRV) 解析を用いた様々なヘルスモニタシステムが開発されている.さらに身体にかかる熱負荷がHRV に影響することが,知られているため,HRV から熱中症の兆候を検知することができると考えられる. HRV データからの熱中症検知には機械学習の活用が想定されるが,そのためには,健常時と熱中症周辺期双方の大量の実データが必要である.そこで今年度は,日本製鉄の複数の製鉄所において,特に暑熱環境である工程で作業している作業員,および夏場にマラソンの練習をしているランナー合計約60名に協力していただき,熱中症周辺期の心拍データを収集した.その結果,熱中症周辺期の心拍データを30例程度,収集することができた. さらにこれらの収集した心拍データに基づいて,熱中症症状を検知するアルゴリズムの構築に取り組んだ.熱中症発症時の心拍データは大量に用意することが困難であるため,本問題を健常時データと熱中症発症時データとを分類する通常の2 値分類で解くことは難しい.そこで,熱中症検知モデルの構築には,健常時HRV データのみからモデルを構築できる異常検知モデルを採用した.ここで異常検知モデルとしては,多変量統計的プロセス管理(MSPC)と自己符号化器(AE)を用いた.MSPCを用いた結果,ROC 曲線下面積(AUC) にて,0.98を達成できるアルゴリズムを構築できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
今年度は熱中症アラーム開発に必要な心拍データの収集は,期初は50名を予定してたが,それを上回る60名程度からデータを収集できた.また,収集したデータより高い精度で熱中症症状を検知できるアルゴリズムを開発できた.このことから,本研究開発の進捗状況は当初の計画以上に進んでいるといえる.
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今後の研究の推進方策 |
熱中症アラーム実用化のためには熱中症検知アルゴリズムの精度改善が求められるであり,そのためには今後も実データの収集を継続する必要がある.十分な被験者数を集めるために,協力施設を拡大する予定である.たとえば来夏は,大阪体育大学付属校の協力の下,体育の授業中,または部活動中の中高生からデータを収集する. さらに,熱中症アラーム実用化には,心拍データを容易に測定できるウェアラブルセンサと,検知アルゴリズムを実装したアプリが必要であるため,今後はこれらの開発も並行して進める.
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