研究課題/領域番号 |
19H04503
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研究機関 | 大分大学 |
研究代表者 |
菊池 武士 大分大学, 理工学部, 教授 (10372137)
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研究分担者 |
池田 真一 大分大学, 医学部, 助教 (70444883)
福永 道彦 大分大学, 理工学部, 准教授 (90581710)
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研究期間 (年度) |
2019-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 生体支援 |
研究実績の概要 |
これまでの身体支援機器は身体の解剖学的構造や柔軟性,多自由度性を十分に考慮しておらず,適用可能な動作範囲や使用者が限定される.例えば膝関節は,滑りと転がりによる軸移動が生じるため,通常のロボット関節(単軸機構)では,特に深屈曲で装置との「ズレ」が大きく,人間-機械接触面(表在)や生体関節内部(深部)に余計な負荷が生じる.この人間-機械間の「ズレ」による身体負担の定量評価法や,この負担を最小化する機器の設計手法は未解決である.そこで本研究では,真に人間親和性の高い生体支援機器を実現するために,① 人の運動軸と機器・器具の運動軸との「ズレ」が身体に与える負担の定量評価法の確立,②「ズレ」による負担を最小化し,補助効果を最大化する機器の設計手法の確立を目指す.まず①を達成するために,せん断力検出シートを用いる.本シートは,凹凸シート,着色シート,記録シートの3部材から構成され,シート間の相対運動によって転写される記録痕から,人間―機械間のせん断(ずり)方向の負担を推定する.これにより,既往研究で容易ではなかった,「靴ずれ」のようなせん断方向の負担を定量化できる.次に②を達成するために,生体膝模擬関節によるパワーアシスト機構,および非線形柔軟関節による足関節アシストを発展・応用する.2020年度においては,深屈曲を可能とする膝継手についてこれまでとは異なるPolycentric 機構を用いた新たな継手を開発し,従来の機構と比べて部品点数を低減し,同等の効果を得た.また,矢状面内の大腿骨回転中心運動と提案継手の回転中心のずれを数値シミュレーションによって分析し,提案手法が従来の単軸機構に比べて有利となることを示した.足関節の背屈運動を補助する三次元運動可能な歩行支援靴については,フレイル高齢者を対象としたヒアリングを実施し,ニーズに基づいた意匠デザインを新たに実施した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度発案した保護シート付せん断力検出シートは特許出願し知財として確保した.さらに深屈曲を可能とする膝継手についてこれまでとは異なるPolycentric 機構を用いた新たな継手を開発し,これを特許出願予定である.共同研究者による生体関節と継手関節のずれのシミュレーションは当初予定通りの成果を得て論文発表することができ,論文賞を受賞することができた(日本福祉工学会九州支部 論文講演優秀賞).足関節の背屈運動を補助する三次元運動可能な歩行支援靴については,フレイル高齢者を対象としたヒアリングを実施し,ニーズに基づいた意匠デザインを新たに実施した.これらの成果は論文3報,学会発表7件等で報告した.以上の理由により,研究は計画通りおおむね順調に進展していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
2020年度において当初計画の内容を概ね達成することができたため,2021年度に関して当初予定通りに研究を遂行する.足関節の背屈運動を補助する三次元運動可能な歩行支援靴については,2020年度でフレイル高齢者を対象としたヒアリングを実施し,ニーズに基づいた意匠デザインを新たに実施した.2021年度ではこれらの成果に基づき背屈保持サポートユニットとして具現化する.メインフレームはエンプラもしくは繊維強化プラスチックにより造形し,内蔵エラストマの形状を最適化することで個人に適した補助ユニットとする.その設計手法を確立するために,昨年度までに開発された保護シート付せん断力検出シートと,新たに実施する足部の力学モデルを用いる.
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