研究課題/領域番号 |
19H05459
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中村 栄一 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特別教授 (00134809)
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研究分担者 |
原野 幸治 東京大学, 総括プロジェクト機構, 特任准教授 (70451515)
柳澤 春明 東京大学, 大学院医学系研究科(医学部), 講師 (70466803)
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研究期間 (年度) |
2019-04-23 – 2024-03-31
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キーワード | 分子電子顕微鏡学 / 結晶形成 / 構造解析 / 微量分析 / 化学反応機構 |
研究実績の概要 |
本年度は,原子分解能高速動画技術の完成,単分子レベル統計熱力学および動力学解析手法の開発と,三次元分子構造解析新手法の開拓の3つの課題を研究した.具体的には以下に述べる諸事項を検討した. 原子分解能高速動画技術の完成:ノイズ除去アルゴリズムによる高速撮影;昨年度から継続して,最高1600フレーム/秒で連続的に生成する高ノイズ画像に対し,動画の前後関係を認識しながら背景部分をノイズ除去するtotal variationアルゴリズムを適用し,時間,空間的に非周期的な運動を検出する電子顕微鏡的手法を開発した.この高速動画撮影法を活かして分子運動をミリ秒レベルで撮影することを試み,単分子レベルでの分子運動の特徴を バルクで観察される分子の動きの特徴と統計的に比較した. 分子レベル統計熱力学および動力学解析手法の開発:複雑混合物の究極微量分析及び個別反応事象の「その場」反応観察;物質にせよ化学反応にせよ純粋単一の分子から成るシステムは存在しない.本研究ではカーボンナノチューブの上や内部に取り込んだ分子,例えばシクロデキストリンや生理活性ペプチドなどの構造を動的に観察し,多数の分子の挙動を一つ一つ観察し,それを統計処理することで熱力学的パラメータを決定するという分子レベルの統計熱力学および動力学解析手法の手法を開発した. 三次元解析新手法:深さ分析による3次元情報取得;デフォーカスを変化させて得られる3次元情報を含んだ画像を,上記二つの手法を活用して画像の精細度を向上させ,それによって通常は2次元情報しか得られない電顕イメージングにおいて,3次元情報を取得する方法論を探索した.この方法の力量を確認するために,本年度に超高速カメラを導入して立ちあげた.また最近急速に普及しつつある電子結晶解析法による3次元構造情報取得に成功した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度の最大の事業はガタン社K3―ISカメラの導入と立ち上げであった.過年度よりガタン社と十分の打ち合わせを行っていたため予定通り12月に動作確認ができ,3月末までに最初のデータセットを取得し,予定通りの機能を発揮することが分かった.この機能を活用して,速い速度で運動する有機分子の動的な挙動をその場観察するための条件等を進めている.三次元解析では,10ミリ秒単位で焦点面を移動させながら多数の画像を測定する必要があり,特に相手の分子が素速く動く状況では資料および測定条件の最適化が必要である.新しいカメラおよびソフトウエアの活用で問題解決を図っている.
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今後の研究の推進方策 |
令和2年度に導入したガタンK3-ISカメラを活用して,低速カメラによって過去に取得した系を参照データとして,最高性能を引き出すとともに,ペプチド系抗生物質の動的構造解析などこのカメラの特徴が最大限に活かせる実験系を探索する.
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