研究課題/領域番号 |
19H05460
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
西原 寛 東京理科大学, 研究推進機構総合研究院, 教授 (70156090)
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研究分担者 |
坂牛 健 国立研究開発法人物質・材料研究機構, エネルギー・環境材料研究拠点, 主幹研究員 (50756484)
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研究期間 (年度) |
2019-04-23 – 2024-03-31
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キーワード | 二次元物質 / 金属錯体 / 結晶 / ヘテロ構造 / 導電性 / エネルギー貯蔵 / 太陽電池 |
研究実績の概要 |
配位ナノシートのエネルギー貯蔵材料としての特性について、2019年にニッケルイオンとヘキサアミノベンゼンから合成されるビス(ジイミノ)ニッケルシート(NiDI)が、リチウムイオン二次電池の正極材料として155 mAh/gの高いエネルギー密度を持つことを報告した。今回、ビス(ジイミノ)銅シートCuDIについてその正極材料特性を評価し、400 mAh/gの極めて高いエネルギー密度を持つことを見出してそのカチオン/アニオンがともに関わるデュアルイオンレドックスメカニズムを明らかにした。 配位ナノシートのヘテロ構造についての研究として、ビス(テルピリジン)鉄ナノシート(Fe-tpy)とビス(テルピリジン)コバルトナノシート(Co-tpy)のヘテロ積層を水/ジクロロメタン界面での連続的ワンポット合成で作製することに成功した。その積層構造をTEM-EDSにより解析し、ナノシートの成長機構を明らかにした。ヘテロ積層膜の電気化学特性をサイクリックボルタンメトリーで解析し、混合原子価状態の狭いポテンシャル領域においてナノシートの導電性が上昇すること及び内層が外層と基板間の電子移動を媒介することを示した。さらに、電極に挟んだ二層膜の電流―電圧特性では、安定した整流特性を示し、バリア電圧は二層間の酸化還元電位差に対応することを明らかにした。また、配位ナノシートの反応性を利用して面内へテロ接合の作製にも成功し、その整流特性を見出し、論文投稿準備中である。 配位ナノシートのデバイス応用として、テルピリジン亜鉛(II)配位ナノシートを複合することにより、ペロブスカイト太陽電池の特性が向上することを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では、金属錯体から成る二次元物質である配位ナノシートに関して、これまで研究が進んでいなかった高結晶度化およびヘテロ構造化という基盤技術の確立と化学的・物理的な特性・機能の応用展開を目指している。本研究においては、ヘテロ構造化に関して二相界面での逐次的錯形成反応を用いたFe-tpyとCo-tpyからなる面直ヘテロ接合体の作製に成功し、そのダイオード的電子移動挙動を明らかにした。また、面内ヘテロ接合体の作製にも成功し、その整流特性を見出している。これらの成果は、様々な配位ナノシートのヘテロ構造化の手法を達成するともに、ヘテロ構造に基づく物性発現へ大きく展開したことを示している。また、配位ナノシートの応用展開に関しては、導電性と多電子移動特性を生かしたエネルギー貯蔵材料への展開に関しては、コバルト酸リチウムなどの金属酸化物材料よりエネルギー密度の大きなCuDI系を見出す大きな成果を挙げるとともに、配位ナノシートがペロブスカイト太陽電池の性能向上にも有用であることを見出した。以上のことから、研究計画が順調に進んでおり、「(2)おおむね順調に進展している」を選択した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題では、色々な配位ナノシートについてヘテロ構造化と高結晶度化を実現することを目指している。ヘテロ構造化については、ヘテロメタル化やヘテロ積層化に成功し、論文発表した。残るヘテロ構造化として面内ヘテロ接合化の新規作製法の開拓とその整流特性の発現に成功し、現在、整流特性の機構解析を進めている。それらの研究成果が整えば、論文発表する予定である。準備を進めている。さらに、上記のヘテロ構造化の集大成として、段階的な異種金属導入法による、精密設計されたヘテロメタル化とその金属分布の面直または面内分布の制御を実現する研究を進める。 高結晶化に関しては、これまでに単結晶合成や、かなり構造規制されたナノシート合成には成功してきたが、依然として、大きなシングルドメインの原子層ナノシートの作製が課題として残っている。次年度は、水熱合成などの新しい合成法を導入したり、剥離法をより詳細に検討することにより、物性測定に資する面積を持つシングルドメインナノシート作製の研究を行う。 最終的には、単結晶の原子層配位ナノシートのヘテロ構造を作ることによって、未踏の量子物性の発現に展開することを計画している。
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