研究課題
プラズマ活性乳酸リンゲル液(PAL)の成分解析の結果、脳腫瘍培養細胞とアストロサイト正常細胞に選択的殺傷効果を示す有力な候補物質として2,3-ジメチル酒石酸を同定していたが、今年度、有機合成した2,3-ジメチル酒石酸を入手し、脳腫瘍培養細胞に対する抗腫瘍効果について、乳酸リンゲル溶液中における2,3-ジメチル酒石酸の濃度依存性を明らかにした。分担研究者の吉川らは反応性ガスを制御することが可能なプラズマ発生装置により生成したプラズマ活性溶液を用い、卵巣癌細胞に対する死滅効果を検討した結果、反応性ガスの種類や混合比の違いにより、プラズマ活性溶液の抗腫瘍効果が異なることを明らかにした。分担研究者の豊國らは臨床応用により近づけるためにPAL溶液を使用して、中皮細胞と悪性中皮腫細胞への効果を評価し、腫瘍細胞ではフェロトーシスを誘導することが明らかになった。分担研究者の片岡らは、大気圧プラズマを体外からラットの大脳皮質組織へ頭蓋骨を通して照射し、照射組織全体を組織超微細構造の変化まで明らかにできる広域電子顕微鏡撮像をおこなった。幹細胞や免疫細胞が大脳皮質組織中へ誘導される様子を電子顕微鏡レベルで明らかにした。分担研究者の榊原らは、低温プラズマ照射がイネ幼苗の成長促進を引き起こす原因究明のために照射水の化学組成の変化を解析し、硝酸イオン濃度、過酸化水素濃度、pHなどの変化を定量的に明らかにした。また、栽培イチゴクラウン部位への低温プラズマ直接照射によりABA依存的に果実着色が促進することを示唆した。分担研究者の伊藤らは、酸素ラジカル処理したフェニルアラニンとトリプトファン溶液に殺菌能と植物の成長促進能があることを確認し、殺菌因子はフェニルアラニンの誘導物質であることを明らかにした。分担研究者の古閑らは、植物に対するPALの効果検討について、植物の成長段階に合わせた検証を行った。
1: 当初の計画以上に進展している
2019年4月1日には名古屋大学低温プラズマ科学研究センターが設立され、共同利用・共同研究拠点として、我が国の低温プラズマ科学の拠点として整備され、多くの人材や情報が集結した。研究代表者の堀勝教授はセンター長、分担研究者の吉川史隆教授は、副センター長、分担研究者の豊國伸哉教授はプラズマバイオシステム科学部門の部門長に就任し、強固な連携体制のもと、特別推進研究において世界を先導する成果を挙げ続けた。具体的には、52報の論文公表、32件の招待講演の成果を挙げた。また、分担研究者の榊原均教授主導の元、分担研究者片岡洋祐チームリーダーと名大理研科学技術連携センター共同研究を開始し、名古屋大学と理研が地域ハブとしての役割を担いながら研究を共同で行う体制が構築された。以上の状況を鑑みて、現在までの進捗状況を当初の計画以上に進展していると自己評価した。
完全密封型プラズマ活性溶液作製装置を設置し、発光分光によるプラズマのキャラクタライズ、LC/MSによるプラズマ誘起活性物質の探索、in vitroの細胞実験に基づく細胞内分子機構の統一的な解明などを進める。分担研究者の梶山らは反応性ガスの制御により生成された卵巣がん細胞を強力に死滅させるプラズマ活性溶液が、生体内における癌の播種・進展を抑制するかどうかを、マウス卵巣癌腹膜播種モデルを用いて検討を行い、その制御機構について明らかにしていく。分担研究者の豊國らは、PALの腫瘍細胞への効果に関してメタボローム解析を実施し、鍵となっている代謝系を明らかにする。分担研究者の片岡らは、大気圧プラズマ照射によって大脳皮質中に誘導された幹細胞、免疫細胞等について、同一対象組織について光学顕微鏡と電子顕微鏡の両技術で観察するCLEM(光‐電子相関顕微鏡)法を用いて発現分子と微細構造を同時に明らかにし、組織再生メカニズムの解明に迫る。分担研究者の榊原らは、プラズマ照射による硝酸イオン濃度、過酸化水素濃度の変化で成長促進効果が説明できるか否かについて、各要因の再構成液でその効果を検証する。また低温プラズマ処理区と非処理イチゴのRNA-seq解析により果実着色に関わる機構を明らかにする。分担研究者の伊藤らは、HPLC、LC/MS、NMR、次世代シーケンサー等を用いて酸素ラジカル処理したフェニルアラニンとトリプトファン溶液の殺菌因子の構造特定、生長促進因子の特定及び脂質二重膜や細胞との相互作用の解明を推進する。分担研究者の古閑らは、PALを用いた発芽以降の生長特性および収穫特性を明らかにするとともに、得られた種子の発芽・生長特性を明らかにする。
すべて 2020 2019 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (53件) (うち査読あり 51件、 オープンアクセス 19件) 学会発表 (118件) (うち国際学会 44件、 招待講演 69件) 図書 (6件) 備考 (2件) 産業財産権 (2件) 学会・シンポジウム開催 (1件)
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