研究課題/領域番号 |
19H05462
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
堀 勝 名古屋大学, 低温プラズマ科学研究センター, 教授 (80242824)
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研究分担者 |
豊國 伸哉 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (90252460)
梶山 広明 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (00345886)
片岡 洋祐 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, チームリーダー (40291033)
伊藤 昌文 名城大学, 理工学部, 教授 (10232472)
榊原 均 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (20242852) [辞退]
古閑 一憲 九州大学, システム情報科学研究院, 教授 (90315127)
松本 省吾 名古屋大学, 生命農学研究科, 教授 (90241489)
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研究期間 (年度) |
2019-04-23 – 2024-03-31
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キーワード | 低温プラズマ / プラズマ活性溶液 / プラズマ活性乳酸リンゲル液 / プラズマ医療 / プラズマ農業 |
研究実績の概要 |
我々はNMRやLC-MS/MSの実験手法を用いて、プラズマ活性乳酸リンゲル液(PAL)の主成分として、酢酸、ギ酸、ピルビン酸、2,3-ジメチル酒石酸、グリオキシル酸を同定し、2,3-ジメチル酒石酸は正常細胞に対してがん細胞を選択的に殺傷することやグリオキシル酸はがん細胞に対しても正常細胞に対しても細胞毒性を示すことを見出したが、この成果が今年度Scientific Reports誌に公表された。また、細胞外フラックスアナライザーを用い、PALが解糖系などの細胞呼吸にダメージを与えることをまとめた論文も公表され、更に、低温プラズマによる出芽酵母のアルコール発酵能の増大が解糖能の増大によることを明らかにした論文も公表された。また、雰囲気ガス完全制御プラズマ活性溶液作製装置により作製されたPALに2-メチルアミノアルコールが生成されることを明らかにしその成果をまとめた論文も公表された。更に、豊國らとの共同研究により、PAL投与した中皮腫細胞のメタボローム解析とそのフォローアップ実験を通じて、初期は外因的なNOによりオートファジーが誘導されるが、後期にはiNOS遺伝子発現の上昇に伴い、シトルリン-NOサイクルを上昇し、リソゾーム内にNOが蓄積することによりフェロトーシスが誘導することが明らかになったが、この成果をまとめた論文がRedox Biology誌(IF=~12)に公表された。また、片岡らとの共同研究により、大脳皮質への低温プラズマ照射が神経細胞の再生を誘導するという驚くべき効果の発見がAPEXに公表された。また、米国やドイツのプラズマ医療を先導する研究者らと共著で、がん治療におけるプラズマ活性溶液に関するreview論文をCancers誌(IF=~6)に公表した。またプラズマ医療のロードマップに関する国際共著論文がIEEE TRPMS誌に公表された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初計画していた、プラズマ活性溶液内に生成されるプラズマ誘起活性物質の同定は順調に進められ、いくつかの論文公表に至った上に、更に様々なプラズマ誘起活性物質が同定されており、期待通りの成果が挙げられていると言える。また、これまで、プラズマ医療に関する論文はインパクトファクターが2~4程度の雑誌に公表されることが多かったが、インパクトファクターが10以上のRedox Biology誌に公表されたことは特筆すべき成果と言える。また、プラズマ医療における我々の研究のポテンシャルは国際的にも高く評価されており、特にプラズマ活性溶液の研究において世界を先導する成果を挙げ続けてきたことが評価され、Cancers誌に国際共著review論文を公表したり、IEEE TRPMSに国際共著でロードマップに関するreview論文を公表するに至った。以上の成果により、当初の計画以上に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本プロジェクトでは、網羅的な遺伝子発現解析、シグナル伝達ネットワークの解析、メタボローム解析により、統一的な細胞内分子機構の解明を行うことを1つのゴールとしているが、今年度までにメタボローム解析とそのフォローアップ実験により新たな細胞内分子機構を提唱することに成功した。更に、網羅的な遺伝子発現解析(マイクロアレイ解析)を通じて、プラズマ活性溶液が細胞にもたらす新たな細胞内分子機構が示唆されている。今後、PAL処理した細胞のマイクロアレイ解析のフォローアップ実験を行うことにより、PALによる細胞内分子機構を次々と明らかにしたいと考えている。その過程で、PALが特異的に活性化するシグナル伝達ネットワークが同定されたり、PALによるがん細胞への細胞死誘導の機構が統一的に明らかになることが期待される。また、引き続きNMRやLC-MS/MSによるプラズマ活性溶液内の成分の同定も進め、岐阜薬科大学などとの連携によりプラズマファーマシーの学理を確立する。低温プラズマがイチゴやイネなどの植物個体に与える影響の分子機構の解明や低温プラズマが免疫系を活性化する機構の解明を進めることにより、個体レベルでの統一的な分子機構の解明も目指す。
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