研究課題/領域番号 |
19H05464
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
笠原 次郎 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 教授 (60312435)
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研究分担者 |
松尾 亜紀子 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (70276418)
船木 一幸 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 教授 (50311171)
中田 大将 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 准教授 (90571969)
内海 政春 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 教授 (60727634)
羽生 宏人 国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構, 宇宙科学研究所, 准教授 (60353421)
松岡 健 名古屋大学, 工学研究科, 准教授 (40710067)
川崎 央 名古屋大学, 未来材料・システム研究所, 助教 (20802242)
渡部 広吾輝 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (20881238)
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研究期間 (年度) |
2019-04-23 – 2024-03-31
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キーワード | デトネーション / 推進工学 / 航空宇宙工学 / 観測ロケット / 自律圧縮 |
研究実績の概要 |
(1)多孔冷却面構造のデトネーションエンジンに関する研究に関しては、H3用リテンションスラスタ軌道上実証に向け水素ー酸素RDEで比推力415秒を達成。横壁からのインジェクションによって、C*性能を保ちながら、熱流束を半減できることを確認した。 (2)2024年7月打ち上げ観測ロケットS-520-34号機実験用液体推進剤デトネーションエンジンの作動に成功した。微粒化・気化過程を含む液体推進剤(エタノール-N2O )に対し、デトネーション伝播を高速度カメラで撮影に成功した。最大3秒の試験に成功し、理想的な推力を得た。観測ロケットS-520-34号機用デトネーションエンジンシステム2(DES2)PFM基本設計が完了した。充填形態、外筒取付後保管状態、フライト形態のDES2系統図を製作した。BBMの設計が完了した(2023.4試験予定)。PFMの基本設計が完了した(2023.12試験予定)。深宇宙探査に必須の上段用のエンジンが、デトネーション燃焼を利用することで小型化、高性能化されることが本実験で実証されている。深宇宙探査のための革新的かつフライアブルな新エンジンシステムを創造しつつある点で、社会的意義のある成果である。 (3)冬試験にて、液体推進剤デトネーションエンジンの作動特性実験を実施し、BBM・PFM用燃焼機部を製造し、単体試験を実施した。デフラグレーションモードで最大15秒の燃焼を達成した。液流し試験で流量係数を決定し、作動タイミングの最適条件を決定し、燃焼機-供給系の相互作用を理解した。 (4)N2Oの触媒分解ガスにて、エチレンの点火・保炎に成功した。デトネーションの伝播維持の代表特性である「反射点距離」に関して、極めて広い化学種・圧力・温度領域で定量決定法を確立した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
(1)自律圧縮爆轟現象の昇圧の理解に関して:内筒なしの先進的な定常準1次元レイリー・境界層発達内部流れのモデルを提案している。また、これまでの圧縮性流体力学の常識を覆すスロートのない、ダイバージングRDEロケット燃焼機がデトネーションンジンでは実現できることを発見している。エタノールー酸素システムでも3秒試験に成功し、BBM製造、PFM設計を完了している。 (2)圧力増加の限界値(10-1000)の解明に関して:回転型の高速バルブの研究を実施し、秒速1500 m/sでの開閉するバルブの原理実証に成功し圧力増大解明に道筋を見出している。また、バルブを用いない、静的な回転デトネーションエンジンに関しては、その最大値は、本グループが報告していた150%近傍であることが、世界的にコンセンサスを得る段階になっており、本グループの先見性が証明されている。また、プレナムから燃焼器にかけてのデトネーションの伝播による管路の閉塞に関する基礎物理を解明している。さらに動的RDEを提唱している。 (3)多孔冷却面構造のデトネーションエンジンの熱的特性の解明に関して:すでに、多孔冷却面構造のデトネーションエンジンは、熱平衡に到達する長秒の実験結果を得ている。わずか20 mm程度のエンジンにて、熱制御しながら高いC*効率(95%以上)の音速ジェットを生成可能であることが示された。水素ー酸素RDEで比推力415秒を達成した。このエンジンは、三菱重工業との共同研究にて、軌道上実証・実用化を目指すことになり、まさに世界を先導中である。 (4)デトネーションエンジンユニットに関して:観測ロケットS-520-31号機によるデトネーションエンジンシステム(DES)の宇宙フライトに成功し、大きな世界的インパクトをもたらした。さらに観測ロケットS-520-34号機実験に採択され、2024年度の打ち上げが決定している。 以上のように、項目(1)-(4)で当初の計画を大きく超える研究の進展があった。
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今後の研究の推進方策 |
(1)自律圧縮爆轟現象の昇圧メカニズムの理解:研究が軌道にのった実験装置にて、なるべく広範囲のパラメータでさらに実験を展開する。ダイバージングRDE、液体燃料・酸化剤、先進推進剤での実験・数値解析をより包括的に行い、実験研究を完了させる。 (2) 圧力増加の限界値(10~1000)の解明:動的RDE研究に展開する。高い昇圧性能を証明し、推力特性を評価し、優れた比推力を生み出し得ることを検証する。当初の計画どおりにすすまない場合は、観測ロケット実証試験の結果の解析に重点を移す。 (3) 多孔冷却壁面構造のデトネーションエンジンの熱的特性を解明:水素燃料を含め、熟成した実験装置にて、なるべく広範囲のパラメータで実験を展開する。熱流動構造を定量化できるに十分なデータの取得を目指す。特に燃焼器内部での熱交換と断熱層の構造に着目した研究を展開しつつ、早期の軌道上実証を目指す。 (4) デトネーションユニットと機体統合推力空力特性の解明:観測ロケットS-520-34号機での宇宙飛行実証実験をすすめる。アレイ化したデトネーションユニットを設計製造し飛行試験にて、揚力、抗力、回転力、推力を計測する。胴体及び翼形状に対し、ユニットアレイを統合させ、飛行実験を行う。機体の統合性能として、揚抗比(L/D)、推力、比推力(Isp)、燃料消費率(TSFC)を実験的に取得する。また、回転トルク計測結果から、姿勢の変更がどの程度の範囲で可能なのかを検証する。また、翼(機体)姿勢の安定性を十分な確保できるかを調査し、縦、横、方向の安定微係数を実験的に決定する。この計測結果から、既存機体とは異なるエンジン機体統合形状ユニットを提案する。
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