研究課題
<研究項目1>神経路選択的な光遺伝学的/化学遺伝学的活動操作を同時適用できる新規介入手法の開発:ニューロン種選択的活動制御による特定の神経回路への介入・操作を実現するため、霊長類脳においてニューロン種特異的プロモータを搭載した新規ウイルスベクターの開発に着手した。<研究項目2>全脳的かつ全ニューロン的遺伝子導入技術の開発:アデノ随伴ウイルスの2型(AAV2)と9型(AAV9)のモザイクキャプシドを利用した改変AAV(AAV9.2)ベクターに更なる改変を加えるとともに、当該ベクターをマカクザルやマーモセットの新生児において血管内投与し、従来型に比べてニューロンへの遺伝子導入効率が全脳レベルで向上したことを確認した。また、血液脳関門(BBB)が閉鎖している幼弱期や成体期における全脳的遺伝子導入を実現するため、マイクロバブルおよび経頭蓋集束超音波照射によるBBBの一過性開放技術の最適化に着手した。<研究項目3>神経回路操作による発達障害霊長類モデルの作出と行動・神経活動解析:神経路選択的活動操作技術を利用した発達障害モデルを作出するため、対象となる内側前頭葉皮質から扁桃体や腹側線条体・側坐核に投射する神経回路の構築様式に関する神経解剖学的解析に着手した。<研究項目4>全脳的遺伝子操作による発達障害霊長類モデルの作出と行動・神経活動解析:全脳的遺伝子操作技術を利用した発達障害モデルを作出するため、研究分担者の橋本による網羅的ゲノム解析から同定された発達障害に関わるリスク遺伝子の発現を制御するウイルスベクターの開発に着手した。<研究項目5>集団行動特性解析システムの構築:日立製作所、富山大学等の研究協力者と連携し、まず野生型個体のみが居住する環境において個体を識別しながら集団としての行動特性を評価できる解析システムの基盤的構築に着手した。
1: 当初の計画以上に進展している
当初の研究計画において初年度から取り組むべき「研究項目1」および「研究項目2」については、「研究実績の概要」にも記載したように着実な進捗が得られた。特に「研究項目1:神経路選択的な光遺伝学的/化学遺伝学的活動操作を同時適用できる新規介入手法の開発」では、同一個体において神経路選択的な光遺伝学的および化学遺伝学的活動操作を同時に適用できるウイルスベクターシステムの確立に関して、オプシン遺伝子、DREADDレセプター分子をそれぞれ発現するウイルスベクターの作製は完了しているが、現時点での必要性に鑑みて両者を同時に搭載した新規ベクターの開発には至っていない。その一方で、今後の波及的な研究発展を考慮し、ニューロン種選択的活動制御による特定の神経回路への介入・操作を実現するため、霊長類脳においてニューロン種特異的プロモータを搭載した新規ウイルスベクターの開発を進めている。加えて、当初の研究計画では2年目(令和2年度)に開始する予定であった「研究項目3」、「研究項目4」、および「研究項目5」について、それらの基盤となる要素的研究にすでに着手しており、2年目以降における円滑な研究進展が期待できるため、「当初の計画以上に進展している」と自己評価した。
<研究項目1>神経路選択的な光遺伝学的/化学遺伝学的活動操作を同時適用できる新規介入手法の開発:霊長類脳においてニューロン種特異的プロモータを搭載した新規ウイルスベクターを開発し、ニューロン種選択的な遺伝子操作技術の確立を目指すとともに、同一個体において神経路選択的な光遺伝学的および化学遺伝学的活動操作を同時に適用できるウイルスベクターシステムを必要に応じて確立する。<研究項目2>全脳的かつ全ニューロン的遺伝子導入技術の開発:改良されたAAV9.2ベクターを用いて、BBBが閉鎖している幼弱期や成体期における全脳的遺伝子導入を実現するため、マイクロバブルおよび経頭蓋集束超音波照射を利用したBBBの一過性開放技術による外来遺伝子導入システムの最適化を図る。<研究項目3>神経回路操作による発達障害霊長類モデルの作出と行動・神経活動解析:内側前頭葉皮質から扁桃体や腹側線条体・側坐核に投射する神経回路の構築様式を明らかにするとともに、神経路選択的活動操作技術を利用して当該神経回路の活動を制御した発達障害モデルを作出する。研究分担者の松本、二宮と連携し、作出したモデルの行動変容と神経活動変化を解析する。<研究項目4>全脳的遺伝子操作による発達障害霊長類モデルの作出と行動・神経活動解析:研究分担者の橋本と連携し、発達障害に関わるリスク遺伝子の発現を制御するウイルスベクターを開発するとともに、全脳的遺伝子操作技術を利用した発達障害モデルの作出を目指す。<研究項目5>集団行動特性解析システムの構築:日立製作所、富山大学等の研究協力者と連携し、霊長類研究所内の集団ケージを利用して、まず野生型個体のみが居住する環境下で、個体を識別しながら集団としての行動データを長期間、大容量かつ高精度で採取し、その特性を評価できる解析システムの基盤的構築をおこなう。
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すべて 雑誌論文 (24件) (うち国際共著 4件、 査読あり 24件、 オープンアクセス 22件) 学会発表 (35件) (うち国際学会 5件、 招待講演 1件) 図書 (5件) 備考 (4件)
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