研究課題/領域番号 |
19H05467
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高田 昌彦 京都大学, 霊長類研究所, 教授 (00236233)
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研究分担者 |
二宮 太平 生理学研究所, システム脳科学研究領域, 助教 (40586343)
橋本 亮太 国立研究開発法人国立精神・神経医療研究センター, 精神保健研究所 精神疾患病態研究部, 部長 (10370983)
松本 正幸 筑波大学, 医学医療系, 教授 (50577864)
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研究期間 (年度) |
2019-04-23 – 2024-03-31
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キーワード | 発達障害 / 社会的行動 / 神経ネットワーク / 認知ゲノム / 霊長類 |
研究実績の概要 |
<研究項目1>神経路選択的な光遺伝学的/化学遺伝学的活動操作を同時適用できる新規介入手法の開発:現時点での必要性に鑑みて、オプシン遺伝子とDREADDレセプター分子の両者を同時に搭載したウイルスベクターシステムの開発には至っていないが、いつでも着手できる状態にある。また、霊長類脳においてニューロン種特異的プロモータを搭載した新規ウイルスベクターの開発を進めている。 <研究項目2>全脳的かつ全ニューロン的遺伝子導入技術の開発:キャプシド改変によるモザイクベクターを開発、改良し、新生児への血管内投与により従来のベクターに比べてニューロンへの遺伝子導入効率が全脳レベルで向上したことを検証した。また、血液脳関門が閉鎖している幼弱期や成体期における全脳的遺伝子導入を実現するため、マイクロバブルおよび経頭蓋集束超音波照射を利用した外来遺伝子導入システムの最適化にも着手した。 <研究項目3>神経回路操作による発達障害霊長類モデルの作出と行動・神経活動解析:神経路選択的活動制御による発達障害モデル作出の基盤となる、前部帯状皮質から側坐核と扁桃体への局在投射を解剖学的解析によって見出すとともに、作出したモデルに適用する社会的認知行動課題を開発し、すでに健常個体から予備知見を得ている。 <研究項目4>全脳的遺伝子操作による発達障害霊長類モデルの作出と行動・神経活動解析:発達障害に関わるリスク遺伝子POGZを標的とするshRNA配列を搭載したウイルスベクターの作製に成功し、当該ベクターの全脳導入による発達障害モデルマーモセットの作出に着手する準備を進めている。 <研究項目5>集団行動特性解析システムの構築:集団ケージを利用した社会的行動特性解析システムの基盤的構築をおこなうとともに、日立製作所と連携し、多個体行動同時トレースシステムの構築に向け、長期の記録が可能な個体装着型ロガーを共同開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画において1年目に着手すべき、研究項目1および2については、いずれも着実に進捗し、想定どおりの成果が得られた。研究項目1では、新たに開発したキャプシド改変によるモザイクベクターを用いた共同研究を精力的に展開するとともに、霊長類脳においてニューロン種特異的プロモータを搭載した新規ウイルスベクターの開発を進めている。研究項目2では、キャプシド改変によるモザイクベクターを開発、改良し、新生児への血管内投与により従来のベクターに比べてニューロンへの遺伝子導入効率が全脳レベルで向上したことを確認するとともに、血液脳関門が閉鎖している幼弱期や成体期における全脳的遺伝子導入を実現するため、マイクロバブルおよび経頭蓋集束超音波照射を利用した遺伝子導入システムの最適化に着手している。 また、当初の研究計画では2年目から着手することになっていた、研究項目3~5についても、それらの基盤となる要素的研究をすでに1年目から開始しており、新型コロナウイルス感染拡大の影響により研究計画に少なからぬ遅延が生じたにもかかわらず、3年目以降における円滑な研究進展が期待できるだけの着実な進捗がみられた。研究項目3では、神経路選択的活動制御による発達障害モデル作出の基盤となる、前部帯状皮質から側坐核と扁桃体への局在投射を解剖学的解析によって見出すとともに、作出したモデルに適用する社会的認知行動課題を開発した。研究項目4では、発達障害に関わるリスク遺伝子POGZを標的とするshRNA配列を組み込んだウイルスベクターの作製に成功し、当該ベクターの全脳導入による発達障害モデルマーモセットの作出に着手する準備を進めている。研究項目5では、集団ケージを利用した社会的行動特性解析システムの基盤的構築をおこなうとともに、個体装着型ロガーを日立製作所と共同開発し、多個体行動同時トレースシステムの構築を進めている
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今後の研究の推進方策 |
すでに一定の成果が得られている研究項目1および2については、新規ウイルスベクターを活用した基盤技術の更なる開発、確立を目指す。研究項目1では、霊長類脳においてニューロン種特異的プロモータを搭載した新規ウイルスベクターの更なる開発を推進し、ニューロン種選択的な遺伝子操作技術を確立する。研究項目2では、血液脳関門が閉鎖している幼弱期や成体期における全脳的遺伝子導入を実現するため、マイクロバブルおよび経頭蓋集束超音波照射を利用した外来遺伝子導入システムの最適化を図る。 また、現在取り組んでいる研究項目3~5については、次のように継続する。研究項目3では、前部帯状皮質から側坐核と扁桃体に局在投射する神経回路を対象にし、光遺伝学的あるいは化学遺伝学的な神経活動制御による発達障害モデルをマカクザルにおいて作出する。更に、研究分担者の松本、二宮がそれぞれ独自に開発した社会的認知行動課題を、単一モデル個体あるいはモデル個体と健常個体の2個体対面条件下で訓練し、発達障害モデルの行動変容と神経活動変化を解析する。研究項目4では、開発したウイルスベクターをマーモセットの新生児に血管内投与し、全脳的遺伝子操作技術を利用して発達障害モデルを作出するとともに、研究分担者の橋本が発達障害に特徴的な症状から検討した行動観察指標を用いて、発達障害モデルの行動変容や神経活動変化を解析する。研究項目5では、日立製作所等との連携により構築した、集団行動特性解析システムおよび多個体行動同時トレースシステムを利用し、マカクザルやマーモセットの野生型個体のみが居住する環境下の集団ケージにおいて、個体を識別しつつ集団としての行動データを長期間、大容量かつ高精度で採取し、その特性を大規模データ解析により評価する。 加えて、研究項目3~5の進捗状況に応じて、研究項目6:発達障害霊長類モデルの集団行動特性解析に着手する。
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