研究課題/領域番号 |
19H05468
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
月田 早智子 帝京大学, 先端総合研究機構, 教授 (00188517)
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研究分担者 |
中村 駿 東京医科歯科大学, 高等研究院, プロジェクト助教 (80882779)
鈴木 貴 大阪大学, 数理・データ科学教育研究センター, 特任教授(常勤) (40114516)
後藤 慎平 京都大学, 医学研究科, 特定准教授 (50747219)
足立 誠 京都大学, 医学研究科, 助教 (30335244)
田村 淳 大阪大学, 生命機能研究科, 特任准教授 (00362525)
矢野 智樹 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (20546121)
田中 啓雄 大阪大学, 生命機能研究科, 特任講師 (70795905)
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研究期間 (年度) |
2019-04-23 – 2024-03-31
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キーワード | 上皮バリア / タイトジャンクション / クローディン / アピカル膜 / アピカル骨格 / クライオ電顕 / TJストランド / 細胞間バリア |
研究実績の概要 |
上皮バリア研究の2つの大きな課題、 (1) 生体内でクローディン(Cldn)分子がどの様に重合して、27種類のCldnに特異的な細胞間バリアを形作り、上皮細胞間の物質透過遮断機能や選択的透過機能が構築されるか? (2) TJの細胞間バリアが、「TJ-アピカル複合体」を介してどの様にアピカル面バリアと機能連携して、上皮バリアが構築されるか? に取り組み、細胞間バリア操作法開発の基盤の構築を推進した。 (1)について、27種類のCldn各々により構築される生体内TJ細胞間バリアの特性の解析のための培養上皮細胞系を構築した。Cldnごとに異なる細胞間バリアの物質透過遮断機能や選択的透過機能が、特異的に精密に制御されていることが、分子生物学的、生理学的に詳細に明らかにされた。クライオ電子顕微鏡で、これらの細胞の機能時のTJにアプローチしてTJの分子構築の生体内実態を明らかにできるシステムの構築を進めた。その前段階の固定エポン包埋サンプルのトモグラフィー像で、TJ細胞間に、低解像力ではあるものの、分子構造モデルから予想される繰り返し構造を認めた。さらに凍結サンプルでのラメラ切片調製法を工夫し、クライオ電子顕微鏡で、高解像度の像を得る工夫を進めている。 (2)について、上皮バリア構築に重要な「TJ-アピカル複合体」構成成分の数例について、そのバリア構築メカニズムの、分子・細胞・個体レベルでの解析を進めた。TJに結合するアピカル骨格構成因子の重要性が明らかになり、その上皮バリア構築メカニズムには多様性があることが明らかになった。 今後さらに双方向からの上皮バリア研究を推し進め、上皮バリアによる生体機能構築について新規の統合的解析・理解を開拓し、上皮バリア学の新展開を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、(1) 細胞間バリアの分子構築の生体内実態の解明 と (2) TJ-アピカル複合体の階層縦断的解析 の双方から、上皮バリア研究の新展開を目指し、計画的な研究進捗を推進する。 (1) 細胞間バリアの分子構築の生体内実態の解明:クライオ電顕トモグラフィーの前段階として、培養上皮細胞を対象として、固定サンプルエポン樹脂包埋切片のアピカル面からの観察法を工夫した結果、トモグラフィーの再構築像で、TJ細胞間に、分子構造モデルから予想される繰り返し構造を低解像度ではあるが認めることができた。TJのクライオ電顕トモグラフィーを行う際の試料作製法について進展が見られた。一方で、対象とするTJについて、各々のCldnの発現を確実に制御した細胞のTJを対象とすることに計画を変更した。 (2) 「TJ-アピカル複合体」の階層縦断的解析:「TJ-アピカル複合体」について、分子レベル、細胞レベル、個体レベルでの解析を進めた。分子・細胞レベルでは、「TJ-アピカル複合体」を構成するいくつかの微小管結合新規蛋白質TJMAPsの同定と機能解析が進んだ。具体的には、TJMAP4 (LUZP1)が微小管に結合して、リン酸化型ミオシン軽鎖に強く結合し、ホスファターゼの機能を阻害してミオシン軽鎖のリン酸化レベルを維持するという結果を得た。その結果、上皮細胞アピカル面を囲むアピカルアクトミオシンの収縮性が保たれ、上皮バリアの形態と機能が制御される。また、TJMAP2が微小管と結合して液液相分離をおこしてアクチンフィラメント重合を促進することで、頑強な「上皮バリア」が構築されることが示された。 個体レベルの解析として、TJMAP2のノックアウトマウスの胃炎の解析や、別途、分子・細胞・組織レベルの解析として、気管の多繊毛上皮細胞ける平面内細胞極性 (PCP) 関連蛋白質Dapleの解析を進めた。
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今後の研究の推進方策 |
上皮バリアについて、分子・細胞・個体レベルの統合的研究を進め、分野融合的な研究手法も駆使して、総合的な理解を深める。上皮バリア機能の階層縦断的な機能を斬新な視点で明らかにし、新しい上皮バリア学の基盤を構築し、新規上皮バリア操作法の開拓を目指す。 (1) 細胞間バリアの分子構築の生体内実態の解明:トモグラフィーにおいてTJ部位を特定する方法を定めることができたため、培養細胞を用いたin vivoクライオ電顕トモグラフィーを行い、特に、分子構造が解かれたCldnを発現する細胞系で、これまで仮説として提示しているTJ 分子構築モデルの検証を行う。このために、発現するCldn の種類を任意に制御し得る培養上皮細胞系を確立する。この細胞系について、詳細な生理学的検討を行い、Cldnの種類によるTJ 細胞間バリア機能の多様性を明らかにする。その上で、これらの細胞系に、クライオ電顕トモグラフィーを適用して、TJ分子構築の生体内実態の解析を進める。 (2) 「TJ-アピカル複合体」の階層縦断的解析:分子・細胞レベルの解析では、TJMAPsについて、特に複数の細胞骨格を統合する機能について、液液相分離にも注目して、引き続き解析を進める。細胞・組織レベルの解析では、2色ライブイメージングで、幹細胞から多繊毛上皮細胞への発生分化過程を追うことができ、その定量的解析も可能になった。繊毛の動かない遺伝子改変マウスの作製や、2色ライブイメージング用マウスのPCP異常のマウスとの掛け合わせも進んでいるため、多繊毛同調運動に対するそれらの影響について検討する。個体レベルの解析では、5種の新規CldnKOマウスの解析を進める。
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