研究課題/領域番号 |
19H05591
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研究機関 | 東京外国語大学 |
研究代表者 |
河合 香吏 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (50293585)
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研究分担者 |
曽我 亨 弘前大学, 人文社会科学部, 教授 (00263062)
足立 薫 京都産業大学, 現代社会学部, 准教授 (10802150)
橋弥 和秀 九州大学, 人間環境学研究院, 准教授 (20324593)
杉山 祐子 弘前大学, 人文社会科学部, 教授 (30196779)
大村 敬一 放送大学, 教養学部, 教授 (40261250)
竹ノ下 祐二 中部学院大学, 看護リハビリテーション学部, 教授 (40390778)
五十嵐 由里子 日本大学, 松戸歯学部, 講師 (60277473)
中川 尚史 京都大学, 理学研究科, 教授 (70212082)
西井 凉子 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (20262214)
外川 昌彦 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (70325207)
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研究期間 (年度) |
2019-06-26 – 2024-03-31
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キーワード | 社会性 / 人類進化 / 人類学 / 霊長類学 / フィールド調査 / 学際的研究 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は「社会性」を鍵とした新たな人類進化理論の構築にある。そのために人間の諸社会を対象とする生態/社会/文化人類学と、人間と系統的に近縁な野生霊長類の諸社会を対象とする霊長類社会/生態学という2つのフィールド系学問の協働を軸に、比較認知科学などの実験系や古人類学などの自然人類学系、理論生物学などの理論系といった隣接諸学との対話を重視しつつ、学際的な共同研究を推進するものである。具体的な研究方法は(1)定例研究会、(2)フィールド調査、(3)成果の発信/公開を3本柱としている。 (1)は本研究の核となる共同研究会であり、フィールドデータに基づく研究報告とインテンシヴな議論により理論的側面を発展・深化させ、またゲスト講師から隣接分野の最先端の知見を得つつ、より学際的な討論を展開するもので、2019年度には3回開催した。またこれとは別に、人類学と霊長類学の真の意味での協働にむけて、対象をみる視点からデータ収集、分析・考察に用いる概念、理論構築に至る研究の全過程において、互いの方法論に対する理解を共有し、両者の比較のための新たな方法論の開拓を目指す独自の研究会として方法論研究会を立ち上げ、年度内に2回開催した。さらに、若手の非常勤研究員を世話人とし、若手の人類学者と霊長類学者が集結して議論を重ねる独自の研究会として若者研究会を組織し、年度内にその第1回を開催した。 (2)は本研究の基盤となる一次データ収集のために不可欠の場であり、2019年度には研究代表者、分担者、協力者のうち7名が海外で、1名が国内でフィールド調査を実施した。 (3)は専用のホームページを立ち上げて研究活動の内容を随時発信する一方、公開の研究集会として、コメンテーターを外部から招聘して、立ち上げ(キックオフ)シンポジウムおよびフィールドサイエンス・コロキアムを開催した。また成果の一部を図書として刊行した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2019年度予算による研究活動は研究計画調書および交付申請書に記載した研究内容をほぼ計画どおりに遂行した。本研究課題は2019年6月末に採択が決まり、事務補佐員や非常勤研究員を採用して研究体制を整えたのち、10月から本格的な研究活動を開始した。実質活動期間である6カ月間に以下の研究活動をおこなった。 (1)定例研究会は計画どおり3回開催し、個別研究に関する相互理解を深めた。加えて、採択後にあらたに組織化を決めた方法論研究会を2回開催し、人類学と霊長類学の協働のための方法論の開拓を模索する集中的な議論を展開した。また次世代育成の一環として、同じくあらたに組織した若者研究会の第1回を若手自身の企画、運営により開催した。だが、2020年3月に合宿形式の開催を予定していた年度末総括研究集会は新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大のため延期され、翌年の年度末集会とあわせてオンライン開催となった。 (2)2019年度予算によるフィールド調査は、交付申請時に予定されていた大村(カナダ・イヌイト)、竹ノ下(ガボン・ニシゴリラ)、調査地・対象を変更して河合(マレーシア・イバン)、足立(台湾・タイワンザル)、さらに研究協力者の内堀基光、河合文、川添達朗(マレーシア・イバン)が実施した。中川(ガーナ・パタスモンキー)は調査実施国研究機関の事情により実施の延長を余儀なくされ予算を2020年度に繰越したが、COVID-19の拡大により渡航が不可能となり、国内調査(屋久島・ニホンザル)に切り替えた。 (3)成果の発信/公開は、2019年11月に専用ホームページを立ち上げて随時研究活動報告を発信する一方、計画どおりに立ち上げ(キックオフ)シンポジウムを開催し、さらにフィールドサイエンスコロキアムを企画・開催した。また成果の一部を含む学術図書『極限:人類社会の進化』を2020年1月に刊行した。
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今後の研究の推進方策 |
2021年3月31日時点における今後の研究の推進方策について述べる。COVID-19の感染拡大は終息しておらず、先行きも依然不透明であり予断を許さない。COVID-19をめぐる状況が、今後、いつ頃、いかに推移するかにより研究計画・方法は大きく変わりうる。 (1)研究集会の開催:対面またはオンライン、あるいはハイブリッド形式で、定例研究会、方法論研究会、若者研究会をこれまでと同じペースで実施する(年間6~8回程度)。 (2)フィールド調査の実施:代表者および分担者、調査を希望する協力者は海外渡航が可能となり次第、各自のフィールドの状況に応じて速やかに調査を再開し、データ収集に努める。直接的にフィールド調査をおこなわない分担者の橋彌と五十嵐は国内での実験や観察を進める。ただし、COVID-19をめぐる状況の変化に備えて以下の準備をしておく。海外のフィールド調査が実施できない状況が続く場合には、国内において次の代替措置を実施する。人類学では既存のフィールドデータの整理、分析、データベースの構築などを進める。また、国内の代替フィールドを開拓し、予備調査から開始し、本調査へと進める。霊長類学では国内の野生ニホンザルのフィールド調査、動物園の飼育下霊長類の観察などに切り替える。または既存のフィールドデータの整理、分析を進める。 (3)研究成果の発信/公開:ホームページによる研究活動報告を継続するとともに、フィールド調査が順調に進み、成果の発信が可能になり次第、公開のシンポジウムや講演会を開催する。成果の公刊については、方法論研究会を中心に理論化を進めてきた方法論の開拓に関する到達点を示す中間報告として学術図書を刊行する。最終年度は総括、成果のとりまとめに集中する。最終成果論集(学術図書)の刊行に向けて執筆・編集を進めるとともに、最終成果の国際的な発信として国際シンポジウムを開催する。
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