研究課題/領域番号 |
19H05592
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
藤井 純夫 金沢大学, 古代文明・文化資源学研究所, 特任教授 (90238527)
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研究分担者 |
徳永 里砂 金沢大学, 古代文明・文化資源学研究所, 客員准教授 (00458936)
河合 望 金沢大学, 新学術創成研究機構, 教授 (00460056)
岡崎 健治 鳥取大学, 医学部, 助教 (10632937)
赤堀 雅幸 上智大学, 総合グローバル学部, 教授 (20270530)
本郷 一美 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 准教授 (20303919)
安倍 雅史 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 文化遺産国際協力センター, 研究員 (50583308)
覚張 隆史 金沢大学, 古代文明・文化資源学研究所, 助教 (70749530)
長谷川 奏 早稲田大学, 総合研究機構, 客員上級研究員(研究院客員教授) (80318831)
足立 拓朗 金沢大学, 古代文明・文化資源学研究所, 教授 (90276006)
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研究期間 (年度) |
2019-06-26 – 2024-03-31
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キーワード | アラビア半島 / 遊牧社会 / 部族制 / 新石器時代 / 青銅器時代 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、アラビア半島の先原史遊牧民遺跡の包括的な調査を通して、1)中東部族社会の起源問題を、従来の類推・敷衍レベルの議論から、正確な年代と具体的な遺跡名を伴う実質的論議へと誘導し、2)中東社会の特質をその本源とも言える遊牧部族社会の形成過程にまで遡って解明すること、である。 考古班1(ヨルダン、サウジアラビア内陸乾燥域担当)は、サウジアラビア北西部のワディ・グバイ遺跡群の発掘調査を2021年9月ならびに11-12月に実施し、遊牧部族の形成過程を葬制面から捕捉するための基礎的データを追加した。 考古班2(アラビア湾岸域担当)は、2023年1-2月にバーレーン北部のワーディー・アッ=サイル古墳群の発掘調査を実施し、墓の型式学的分析から、部族社会形成期の遊牧民の家族構成についての知見を得た。 考古班3(紅海沿岸域担当)は、2022年8月にサウジアラビア、紅海東岸のハウラー遺跡の遺物整理調査、2023年2-3月に同遺跡の発掘調査を実施し、イスラーム初期の港町跡の構造や物質文化についての詳細な記録を作成した。 その他、ヨルダンの遺跡出土動物骨の分析を継続し、遊牧化初期段階における動物利用の基礎データを整備した。また、サウジアラビアの出土人骨資料の写真鑑定を継続し、部族形成期における遊牧民の形質人類学的基礎データを整理・分析した。同位体分析分野では出土人骨の歯エナメル質の炭素・酸素同位体分析を継続し、基礎データを整備した。社会学・文化人類学分野では、現代遊牧民社会における「血讐と醜聞」問題に引き続き焦点を当て、遊牧部族の社会構造に関する研究を取りまとめた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルスの影響により、考古各班では予定していた現地調査の回数をスリム化し、調査日数の延長や調査参加人員を増強して、その欠を補った。分析班については、2019年度中に予め搬送していた人骨・動物骨資料の分析に引き続き当たることができたため、当初計画に変更は生じなかった。現地調査を予定していた人骨の形質人類学調査については、写真鑑定によって引き続きその欠を補った。社会学・文化人類学班は文献調査を継続することによって、研究を推進した。
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今後の研究の推進方策 |
研究を遂行する上で生じた最大の問題は、昨年度に引き続き、コロナ禍による調査の中断である。今後は以下4つの対策を継続して施す。第一は、感染収束後における現地遺跡調査の件数・日数の拡大・延長である。考古班1-3では遺跡調査回数またはそれに相当する調査日数を拡大し、当初計画に極力追いつく。 第二は、海外研究組織との共同研究または合同調査の推進・強化である。特に、サウジアラビア北西部のタブーク高原では、同じくフィールドの隣接しているウィーン大学調査団(オーストリア)と、アラビア半島先史遊牧民の水利技術に関する合同調査を進めている。第三は、オンライン環境下での研究および研究発表の強化による成果発表の促進である。 第四は、調査計画の一部スリム化・重点化である。例えば考古班3は紅海西岸の調査を断念し、東岸のサウジアラビア側だけに限定する、などの措置を講ずる。
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