研究課題
温室効果は地球表層の温度を決める重要な要素である.大気中CO2濃度の連続的な測定は1957年以降であり,過去のCO2濃度を復元することは,地球の気候の歴史を考えるうえで極めて重要である.本研究では,長鎖脂肪酸炭素同位体比を用いた独自の手法により,大気中CO2濃度が過去600万年間の最高値が300 ppm前後にすぎないこと,350万年前から250万年前にわたり長期的に低下したこと,CO2濃度が190 ppm前後に低下したタイミングで40万年から4万年に変動周期が変調したことを明らかにした.CO2濃度の長期的低下は太平洋深層水の酸化の進行と同調しており大気海洋系の炭素総量が減少したことによると考えられる.270万年前以降は最近数万年間と同じ様式のCO2濃度変動が続いており,氷期に海洋成層化が強まり深海に炭素が隔離されたとする「成層化仮説」により説明できる.600万年前から330万年前のCO2濃度の40万年周期変動は,円石藻の形状やアルケノン濃度の変動と共通の特徴を持っており,海洋表層での炭酸カルシウム生産量が重要であるとする「アルカリポンプ仮説」により説明できる.本研究では過去600万年間のCO2濃度変動を連続的に始めて明らかした.とくにCO2変動の形態(周期,振幅,位相)が時代により異なることが分かったことは地球の炭素循環に関わる重大な発見である.地表の境界条件の変化が地球システム内でのCO2の挙動を変化させた可能性が想像できる.本研究で得られた過去600万年間の大気中CO2濃度記録は,従来の過去80万年間のアイスコア気泡のCO2濃度記録をはるかに超えており,過去の環境変動・気候変動の原因を考察するうえで不可欠なデータである.IPCCでの地球環境予測評価等,地球環境研究において広範囲に活用されることが予想される.
令和5年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2023 その他
すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 5件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 備考 (1件)
Researches in Organic Geochemistry
巻: 39 ページ: 1-12
Nature Communications
巻: 14 ページ: 2129
10.1038/s41467-023-37325-y
Climate of the Past
巻: 19 ページ: 1359-1381
10.5194/cp-19-1359-2023
Science
巻: 382 ページ: 1136
10.1126/science.adi517
Communications Earth & Environment
巻: 4 ページ: 113
10.1038/s43247-023-00765-x
https://pablos.ees.hokudai.ac.jp/yamamoto/project/KakenSCO2.html