研究課題/領域番号 |
19H05597
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
小川 卓克 東北大学, 理学研究科, 教授 (20224107)
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研究分担者 |
高橋 太 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (10374901)
岩渕 司 東北大学, 理学研究科, 准教授 (40634697)
猪奥 倫左 東北大学, 理学研究科, 准教授 (50624607)
服部 裕司 東北大学, 流体科学研究所, 教授 (70261469)
前川 泰則 京都大学, 理学研究科, 教授 (70507954)
瀬片 純市 九州大学, 数理学研究院, 教授 (90432822)
川島 秀一 早稲田大学, 理工学術院, 教授(任期付) (70144631)
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研究期間 (年度) |
2019-06-26 – 2024-03-31
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キーワード | Keller-Segel 方程式 / 緩和時間零極限 / 一般化された最大正則性 / 消散型非線型シュレディンガー方程式 / 変数係数放物型問題 / 初期値境界値問題 / Foureri-Sobolev空間 / MHD方程式 |
研究実績の概要 |
代表者の小川は, 黒木場正城氏(室蘭工大・工)と共同でKeller-Segel方程式の緩和時間零極限を考察し, 高次元の場合と二次元臨界状況の場合について, スケール臨界空間における緩和時間零極限を証明し, 初期層が現れることを示した. また空間2次元の場合にスケール不変の場合に再考察し方程式の臨界性に付随する, 正則性の欠如に対して一般化最大正則性を適用し有界平均振動のクラスを用いて証明した. 研究協力者の佐藤拓也氏と共同で, 空間1次元消散型非線型シュレディンガー方程式の解の正則性と質量係数のあいだの関係を調べ, 解が時間局所的に解析的となる初期データを同定した. これと関連して, 解の正則性とエネルギーの減衰の関係を調べ, 臨界指数である一次元三次べきの場合に解のエネルギーの減衰のほぼ最適な減衰次数を同定した. また非線型シュレディンガー方程式の半空間初期値境界値問題に対し, 外力項に時間減衰を仮定し時間大域解の存在と減衰を 林 仲夫氏, E. Kaikina氏らと共同で示した. 清水扇丈氏(京大人環境)と共同で, 変数係数放物型初期値境界値問題に対する時間端点最大正則性に関わる速報論文を発表, 本論文は期間延長後に出版した. 研究協力者の松井 竜也氏, 中里亮介氏らと共同で, 磁気粘性流体(MHD)方程式の初期値問題において, 過渡的な連立型である非線型MHD-消散波動系を考察し, その解の時間大域的存在と, パラメータの零極限に依る, 通常のMHD方程式への漸近収束をFourier-Sobolev空間において証明した. さらに, 研究分担者の猪奥倫左氏, 協力者の佐藤龍一氏, M.R. Haque氏らと, 対流拡散方程式の初期値問題の端点指数における時間大域的適切性を空間遠方で減衰しない局所一様ルベーグ空間において証明した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ここ数年来, 検討を重ねてきた, 非線型放物型連立系のKeller-Segel方程式の緩和時間零極限をスケール臨界空間において厳密に証明し, とりわけ2次元における極限先である楕円型問題に対する空間正則性の欠如を補完する, 有界平均振動のクラスにおいて同様の成果を挙げることができたことは, 本課題の主眼の一つである 「臨界空間における特異摂動問題」という問題意識に対する成功例の一つとしての意味合いを持つ. また, 消散型非線型シュレディンガー方程式のエネルギー減衰の境目を与える, 非線型指数は消散型ではない非線型シュレディガー方程式の解の散乱を引き起こすBarabu-Ozawa臨界と同じ指数であることを発見し, 消散型問題に対しても臨界性を引き起こすことが判明したが, これは「臨界指数」に対する新たな意味づけを与え, この方面において一つの大きな成果と言える. 一方, 一般変数係数放物型方程式系の半空間における初期値境界値問題に対する時間端点最大正則性を証明し, その速報論文を発表し, その後, 期間延長後の2022年度に本論文を出版した. これは本課題の根幹的正解であり, 過去10-12年に渡り継続的に研究して来た課題の初めての成果であり, 時間変数に対する絶対可積分性の効果がどのように作用するかの基準となり得る. 圧縮性粘性流体, あるいは非圧縮性粘性流体に磁気効果を含む問題への臨界空間での可解性は, 一部スケール不変空間が2重に存在することによるスケール構造の多重性が問題となるが, そうした問題に対するアプローチとして, 過渡的な摂動に対する問題を設定して, 最大正則性が適用しやすいフーリエ・ソボレフ空間での研究を行えたことは, このあとに推進することとなる圧縮性粘性流体方程式に磁気・電気効果を含む研究への足がかりとなった.
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今後の研究の推進方策 |
2020年度の研究を踏まえ, その後の延長期間において, スケール不変空間における特異摂動問題の安定性(特異摂動極限が安定に得られるかどうか?)を探る研究を継続し, 延長期間において, Keller-Segel 方程式系に続いて, 医療数学に現れる, Anderson-Chaplain 方程式に対する特異摂動の成果や, より微妙な有界平均振動における最大正則性を通じた, 2次元問題へのより詳細な研究を行うことができた. 今後はこうした臨界空間における特異極限問題の安定性について, 圧縮性粘性流体などのより複雑な問題に対して, 研究対象を拡大したい. また, 局所ルベーグ可積分クラスにおける多様な非線型放物型問題の研究は, 非圧縮性粘性流体の運動方程式などの研究において知られるが, 対流拡散方程式に対しても同様の成果を得られたことから, Keller-Segel系や, 移流拡散方程式に対する適用, さらには圧縮性粘性流体の問題に対する拡張を目指す. 一方MHD方程式の研究に端を発し, Hall効果を持つ問題や, 磁気電気効果を持つ問題の数学的な設定を行い, さらにスケール臨界空間での可解性に必要な, 双線形評価や時間端点最大正則性, あるいは多重スケール普遍性に起因する非線型構造の分類などの研究を深めたい. コロナ感染症拡大期に行えなかった, 海外研究者らの積極的な招へい及び若手研究者らの海外短期派遣を通じた研究交流の活発化を目指し, コロナウイルス感染拡大前の交流の水準に戻すことを目指す.
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