研究課題/領域番号 |
19H05607
|
研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
荻尾 彰一 大阪市立大学, 大学院理学研究科, 教授 (20242258)
|
研究分担者 |
竹田 成宏 東京大学, 宇宙線研究所, 助教 (40360581)
有働 慈治 神奈川大学, 工学部, 准教授 (50506714)
多米田 裕一郎 大阪電気通信大学, 工学部, 講師 (90467019)
冨田 孝幸 信州大学, 学術研究院工学系, 助教 (70632975)
|
研究期間 (年度) |
2019-06-26 – 2024-03-31
|
キーワード | 宇宙線 / 化学組成 / 宇宙線の起源 / 銀河系 / 銀河間空間 / 宇宙物理 |
研究実績の概要 |
TALE実験地表検出器(SD)アレイは2019年9月から定常観測を継続し、平均稼働SD75台、イベントレートは毎分約3イベントで安定運用されており、2020年度末までに当初予定を7倍超上回る80万イベント(モードエネルギー10^17.0 eV)を記録した。TALE実験FDは途中観測中断はあったものの2020年1月までに当初予定を5倍を上回る6万以上のハイブリッドイべント(モードエネルギー10^16.9 eV)を収集した。 TALE実験FDのみの観測(単眼観測)によるデータを解析するプログラムはT. Abu-Zayyad(研究協力者、ユタ大学/ロヨラ大学・研究准教授)によって整備され、化学組成決定の指標であるシャワー最大発達深さ「Xmax」 の測定結果を2021年にAstrophysical Journalに発表した(R.U. Abbasi, et al., Ap.J., 909, 178(2021))。 本研究では、TALE実験の安定運用継続に加えて、TALE実験のハイブリッド観測のエネルギーしきい値を下げるため、既存のTALE実験SDアレイよりもさらにFD寄りにより高密度にSDを追加設置する計画(TALE infillアレイ)である。モンテカルロ計算に基づく最適化によってこの配置案を決定した。TALE実験の10^17.0 eVに対し、TALE-infillアレイとFDのハイブリッドでは最頻エネルギー10^15.5 eVを達成できると期待される。現状ではXmaxの分解能45g/cm^2、エネルギー分解能33%とTALE実験ハイブリ ッドに比べ2倍くらい大きい点はさらなる改良によって解決する必要がある。 TALE infillアレイのためのSD50台分の部品購入・製作を進め、太陽電池パネルとSD架台以外の部品の調達を完了した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
TALE実験FD とSDによるハイブリッド観測のためのデータ解析プログラムは開発が完了し、ハイブリッド観測の性能評価を含む予備的解析結果を2021年春の日本物理学会で発表した。これに加え、TALE実験SDアレイのデータ解析プログラムも開発が完了し、シャワー 粒子数密度と宇宙線一次エネルギーの対応付けや性能評価を含む予備的解析結果を2021年春の日本物理学会で発表した。 TALE実験SDアレイによる観測からは10^16.5eVから10^18.5eVまでの宇宙線エネルギースペクトルが求まる段階に到達している。またハイブリッド観測とそのデータ解析は10^16.5 eV 以上のエネルギースペクトルと化学組成の決定、という段階に進んでいる。本研究の測定結果はSDとFDのハイブリッド観測による世界初の観測結果であり、また現在世界で唯一稼働中の装置でもある。成果は着実に得られ、公表できており、また TALE 実験ハイブリッド検出器は全体として正常に定常観測を続けている。こ の点からは、当初の期待通り研究が進展している。 しかし一方で、コロナウイルス感染拡大の影響を受けて、装置の製作、設置点調査、設置などの作業は中断しており、当初計画していた高密度 SD アレイの完成は遅れている。 これらの点から上記の達成度を選択した。
|
今後の研究の推進方策 |
地表検出器(SD)本体は、これまでTA実験、TALE実験、TA×4実験同様これまでの経験を踏まえ、東京大学宇宙線研究所明野観測所(山梨県北杜市)の大実験室において2021年夏に製作作業を予定している。製作場所となる実験場の配置の 最適化、製作マニュアルの整備も完了している。 2021年4月からSD設置点の調査を開始し、2021年度内の新規SDの設置、および TALE実験SDのバッテリー交換による電源更新を完了したい。新規SDの設置点をユタ州政府の管理下、すなわちローカルな行政府の管轄下にある領域に選んだ。これによって各種調査や許認可が、連邦政府管理下に比べて、素早く進むものと期待している。 本研究で建設するSD50台からなる高密度アレイは2022年3月に稼働開始する予定であり、 本申請研究課題の終了までに2年間データ取得できる見込みである。まずは、日本国内で可能な、データ解析プログラム群の整備・モンテカルロ計算に装置性能の評価など、ソフトウェア関連の準備を進めていく。 TALE実験SDアレイは新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けずに定常運用を続けており、2020年度末までに80万イベント、ハイブリッド観測では6万イベントを収集している。これらのデータの解析を進めており、2021年7月に開催される第37回宇宙線国際会議をはじめ、 国内外の研究集会で、エネルギースペクトル・化学組成・到来方向異方性(大規模異方性、周期解析、銀河面異方性、超銀河面異方性など)についての、予備的な解析結果を公表する。 本申請研究の4年経過の時点、すなわち2022年度末には、20万ハイブリッド事象(最頻エネルギー10^15.5 eV)、 240万SD事象(最頻エネルギー10^15.5eV)が期待される。2023年半ばに開催が予定されている第38回宇宙線国際会議をはじめ、国内外の学会で成果を公表する。
|