研究課題/領域番号 |
19H05607
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
荻尾 彰一 東京大学, 宇宙線研究所, 教授 (20242258)
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研究分担者 |
竹田 成宏 東京大学, 宇宙線研究所, 助教 (40360581)
有働 慈治 神奈川大学, 工学部, 准教授 (50506714)
冨田 孝幸 信州大学, 学術研究院工学系, 助教 (70632975)
多米田 裕一郎 大阪電気通信大学, 工学部, 准教授 (90467019)
常定 芳基 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 教授 (50401526)
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研究期間 (年度) |
2019-06-26 – 2024-03-31
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キーワード | 宇宙線 / 化学組成 / 宇宙線の起源 / 銀河系 / 銀河間空間 / 宇宙物理 |
研究実績の概要 |
日本からの派遣を再開することができ、夏に集中的なメンテナンスキャンペーンを実施し、稼働地表検出機(SD)台数100%を達成できた。その後もリモートでの実験装置の監視とユタ大学の現地雇用職員による現地作業の連携によって定常観測継続している。 TALEハイブリッド観測のエネルギーしきい値をさらに一桁下げるべく、SDを追加設置した(2022年10月)。50台のSDを100 m間隔で追加設置し、0.36平方 kmをカバーしている。 TALEハイブリッド観測による10^17eV領域宇宙線のエネルギースペクトル、平均原子核質量数のエネルギー変化を日本物理学会、イタリアで開かれた国際会議UHECR2022などで報告した。 ハイブリッド観測に比べて圧倒的に(10倍以上)統計量の多いTALE SDアレイによる空気シャワー観測データから一次宇宙線原子核種をevent by eventに決定する手法を研究している。モンテカルロ(MC)シミュレーションで作られた陽子または鉄原子核由来のTALE SD擬似測定データに対して、粒子種を判別する2値分類機械学習モデルを作成し、性能を評価した。研究結果の1つを図4に示す。モデルへの入力データは、シャワー解析の結果として得られる到来方向、一次エネルギー、横方向粒子数分布、シャワー面曲率、シャワー面厚みなど27個のパラメーターとコアにもっとも近い検出器1台の上下2層の波形信号、合計283個の数値である。陽子、鉄原子核の2成分に対する分類精度として72.3%が得られている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要にも述べたように、日本からの派遣を再開することができ、夏に集中的なメンテナンスキャンペーンを実施することができた。また、TALEハイブリッド観測のエネルギーしきい値をさらに一桁下げるべく、SDを追加設置することもできた。TALEハイブリッド観測による10^17eV領域宇宙線のエネルギースペクトル、平均原子核質量数のエネルギー変化を日本物理学会、イタリアで開かれた国際会議UHECR2022などで報告した。 このように2022年度は国際的な活動を再開できたが、物流コスト、旅費などが高騰した影響で、SDの設置作業が大幅に遅れ、また十分な数の研究者をユタ州の現地に派遣することができなかったため。追加設置されたSDの空気シャワーアレイとしての稼働が2023年度にずれ込み、遅れてしまった。 このため上記の達成度を選択した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で建設するSD50台からなる高密度アレイは2023年8月に稼働開始する予定である。日本国内ではデータ解析プログラム群の整備・モンテカルロ計算に装置性能の評価などソフトウェア関連の準備は完了しており、データ収集開始を待つ段階に進んでいる。 TALE実験SDアレイは新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けずに定常運用を続けており、またデータ解析を進めており、2023年7月に開催される第38回宇宙線国際会議をはじめ、 国内外の研究集会で、エネルギースペクトル・化学組成・到来方向異方性(大規模異方性、周期解析、銀河面異方性、超銀河面異方性など)についての解析結果を公表する。 SDアレイによる観測データに対して機械学習によるデータ解析手法を適用した原子核種組成決定法に関する研究も進んでおり、実データへの適用段階に入っている。今後はまずTALEではなく、TA実験の最高エネルギー宇宙線事象への適用を手始めにすすめる予定である。
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