研究課題/領域番号 |
19H05609
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
玉川 徹 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 主任研究員 (20333312)
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研究分担者 |
高橋 弘充 広島大学, 先進理工系科学研究科(理), 准教授 (10536775)
三石 郁之 名古屋大学, 理学研究科, 講師 (90725863)
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研究期間 (年度) |
2019-06-26 – 2024-03-31
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キーワード | 宇宙物理学 (実験) / X線・ガンマ線偏光 / 超強磁場 / 中性子星 / 飛翔体観測 |
研究実績の概要 |
(1) IXPE衛星に搭載するX線偏光計の、各種試験を実施した。2019年9月には、放射線医学総合研究所 HIMAC 加速器にて、理化学研究所から提供しているガス電子増幅フォイル (GEM) に鉄イオン照射を行い、宇宙空間における動作の健全性を確認した。これにより、GEM は衛星軌道上10年間の運用に耐えられることが示され、最短衛星設計寿命の2年をはるかに超える運用ができることを示した。また、INAF/Rome (イタリア) において、約1年間にわたり検出器の較正試験を実施し、全ての性能が要求仕様内に収まっていることを確認した。 (2) 名古屋大学において、IXPE衛星搭載のX線望遠鏡用熱シールドの製作を完了し、NASA/マーシャル宇宙飛行センターに納品した。これにより、日本から IXPE 衛星プロジェクトへ予定されていたフライト品ハードウェアの提供は、全て完了した。また、熱シールド予備品に対して宇宙空間を模擬した耐性試験を実施し、要求を満たしていることを確認した。 (3) XL-Calibur 気球実験の搭載機器準備として、日本から提供する硬X線望遠鏡のアラインメント試験を、放射光施設 SPring-8 にて実施した。この先、1-2回の追加実験を経て、望遠鏡全体のアラインメントが完了する予定である。 (4) XL-Calibur 搭載コンプトン偏光計のアップグレードに向けた調査実験を、広島大学にて実施した。コンプトン偏光計の吸収体として用いているCZT検出器を、2 mm 厚から 0.8 mm 厚のものに変更し、エネルギー分解能や低エネルギー閾値などの基本性能が満たされていることを確認した。これにより、バックグラウンドの影響を2倍以上低減しつつ、観測感度が維持できることとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
IXPE衛星の開発については、本年度に予定していた較正試験と開発は全て完了し、想定通りの結果が得られた。XL-Calibur 気球実験に向けて、本年度に実施予定であった研究開発は全て完了し、こちらも想定通りの結果が得られた。コンプトン偏光計のアップグレードについては、予定よりも半年以上前倒しで結果が得られた。以上より、概ね順調に計画が進捗していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2021年のIXPE衛星の打ち上げに向け、予定通りに最終試験を進めるとともに、衛星打ち上げ後すぐの観測に向けた準備、具体的にはマグネター観測候補天体の選定と、観測シミュレーションを進める。XL-Calibur は COVID-19 のせいで、当初の打ち上げ場所であった南極基地での実験再開が見通せないため、打ち上げ場所が南極から北極へ変更された。これに伴い打ち上げ時期が半年間後ろ倒しになったが、2022年夏の放球に向け搭載機器の準備を予定通り進める。観測できる領域は南天から北天へと変更になったが、本研究課題を実施するのに適切な中性子星パルサーであるヘラクレス座 X-1が観測対象として選定されており問題ない。
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