研究課題/領域番号 |
19H05613
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
青木 尊之 東京工業大学, 学術国際情報センター, 教授 (00184036)
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研究分担者 |
森口 周二 東北大学, 災害科学国際研究所, 准教授 (20447527)
橋本 博公 神戸大学, 海洋底探査センター, 准教授 (30397731)
肖 鋒 東京工業大学, 工学院, 教授 (50280912)
白崎 実 横浜国立大学, 大学院環境情報研究院, 准教授 (50302584)
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研究期間 (年度) |
2019-06-26 – 2024-03-31
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キーワード | 自由界面 / 混相流 / 液膜 / 弱圧縮性流体計算 / 流木補足 / AMR / GPU / LBM |
研究実績の概要 |
本研究は、① 多量の瓦礫や流木を含んだ流れの斜面災害のシミュレーション、② 液膜のダイナミクスおよび泡沫の生成・崩壊のシミュレーション、③ 粒子間の液架橋を直接計算するスラリーの固気液分散系シミュレーションから構成される。 ① 安定で高精度なキュムラント型格子ボルツマン法をベースにし、Phase Field法で自由界面を記述するコードを発展させ、浮遊物と自由界面を含んだ流体の相互作用、浮遊物同士の衝突計算を可能にした。さらに、空間充填曲線による動的領域分割を行い、複数GPUでの大規模計算を可能にした。神戸大の60m水槽実験、八戸工大の15m水槽で2cm×2cm×20cmのケミカルウッドによる模擬流木補足実験と数値計算の比較を行い、よく一致する結果を得た。 ② シャボン玉の液膜近傍に8192×8192に相当する高解像度格子を動的に配置した2次元AMRシミュレーションを行った。直径12.5cmのシャボン玉が膜厚117μmの液膜が破断しない計算を示すことができた。物理的な液膜安定性を検証するには、数値的に液膜が破断を避けるために高解像度計算の必要性が明らかになった。また、非イオン性の界面活性剤を添加し、その輸送を気液二相流計算と連成させるコードを開発した。FENE-CR ダンベル・モデルを導入した粘弾性流体の計算を可能にした。さらに、気泡同士の数値的な合体を避けるために、マルチ・フェーズフィールド法を導入するアイディアを試行した。 ③ 個別要素法によるドライな粉体計算に提案されているIsraelachviliの液架橋モデルを導入し、挙動の違いを検証した。一方、2つの球形粒子間の液架橋による力を計算するために、弱圧縮性流体計算手法による気液二相流シミュレーション・コードの開発を行った。設定した接触角に対する再現性、流体の保存性、直交格子上の任意形状の扱いの精度を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
全ての項目も当初の計画に対して十分な達成度である。 ①では神戸大の60m水槽の実験との比較に加え、より定義した実験との比較を目的として、八戸工大の実験との比較計算を開始している。さらに、災害が発生した地域(岩手県岩泉町)の流木災害シミュレーションは再来年以降に実施する予定であったが、実地形を取り込むためのデータ処理を行い、複雑な地形に合わせた高解像度格子配置を行う検証に進んでいる。 ②単一液膜に対しては、AMR法の適用による高解像度計算の観点からの十分な進展と、粘弾性流体モデルの観点からの進展があり、ミクロスケールをマクロスケールに反映する界面活性剤の輸送モデルの導入にまで進んでいる。泡沫のような複数液膜の計算に対し、マルチ・フェーズフィールド法の導入は画期的であり、これまで誰も成功していない泡沫シミュレーションの実現を十分に期待することができる。 ③弱圧縮性流体計算により液架橋の直接シミュレーションの実現に十分な見通しが得られ、2粒子間から複数粒子間に適用し、固気液分散のスラリーの大規模計算に展開するための基礎ができつつある。
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今後の研究の推進方策 |
①多数の瓦礫や流木を含んだ広域の混相流シミュレーションをTSUBAMEの複数GPUを用いて大規模計算を実施する。自由界面と浮遊物体に高解像度格子を動的に適合させるAMR法を導入する。計算の検証のために、八戸工大の小型水槽で貯めておいた水の放水により多数のケミカルウッドがどの程度押し流されるかを実験と比較する。流路に多数のポールを置き何本のケミカルウッドが補足されるかをポールの本数と密度を変えて調べる。固体であるケミカルウッドが構造物に衝突する際の衝撃圧を水だけの場合と比較する。また、災害が発生した地域(岩手県岩泉町)の実地形を取り込むためのデータ処理を進める。 ② 液膜に対して界面活性剤の界面への吸着・脱離を含めた輸送方程式を解き、濃度差マランゴニ効果が液膜の安定性にどのような影響を及ぼすかを調べる。気泡が上昇して水面に到達した際に形成する液膜に対し、重力により薄膜化して破断する過程を検証する。また、気泡毎に異なる識別関数を導入するマルチ・フェーズフィールド法を導入し、液膜の数値的な破断を抑制することにより泡沫が形成される過程を調べる。さらに、時間とともに泡沫の各気泡が安定配置に向かうかどうか、液膜の結合点(ジャンクション)への液体の流入の様子などを明らかにする。気液二相格子ボルツマン法を用い、AMR法により液膜近傍に細分化格子を集中させ、計算の高速化を図る。 ③ 液架橋に対して弱圧縮性流体計算による気液二相流の直接計算を行い、接触角と液体体積を指定した2体球形粒子間の液架橋による引力を解析解と比較する。さらに複数粒子が液架橋で連結しているときのモデルを開発する。粒子間距離を大きくして行く際に生じる液架橋の破断を調べる。
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