研究課題/領域番号 |
19H05617
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
木須 隆暢 九州大学, システム情報科学研究院, 教授 (00221911)
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研究分担者 |
東川 甲平 九州大学, システム情報科学研究院, 准教授 (40599651)
鈴木 匠 九州大学, システム情報科学研究院, 助教 (70756238)
井上 昌睦 福岡工業大学, 工学部, 教授 (80346824)
和泉 輝郎 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 主任研究員 (20415938)
中村 武恒 京都大学, 工学研究科, 特定教授 (30303861)
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研究期間 (年度) |
2019-06-26 – 2024-03-31
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キーワード | 高温超伝導線材 / 導体 / コイル / ロバスト性 / 電流輸送特性 / 欠陥検出 / 磁気計測 / AI |
研究実績の概要 |
高温超伝導線材の評価手法の高度化として、磁気顕微鏡による磁気像を用いた局所欠陥の検出において、深層学習のシステムを構築し、素線内の欠陥部位の自動判定の基本動作に成功した。本手法により、従来手法では検知が難しい臨界電流低下率の低い微小欠陥の検出が可能である事を確認した。また、長尺線材の評価手法として基本となるリール式磁気顕微観察において、センサの多チャンネル化によって高速化を実現し、100 m/hを超える線速による評価に成功した。さらに、低温・高磁界下における連続評価や、電界依存性の計測手法を開発した。以上の評価に基づく知見を線材作製プロセスにもフィードバックし、磁場下の電流輸送性能や空間均一性の向上に成功した。 素線の測定結果をもとに、局所不均一性の影響下における長尺高温超伝導線材の電流輸送特性のモデリング手法を提案すると共に、ロバスト性向上のための複合導体の効果と電流輸送特性について解析的に示した。また、実際に複合導体を作製する際に必要となる要素的プロセス技術として、接合技術の開発に着手した。音波接合によって半田やフラックス等を用いず高温超伝導線材の銅安定化層同士を直接接合することに成功し、界面抵抗100 nOhmcm^2を再現性良く得られる事を確認した。 コイル内欠陥の観測手法の信頼性を確認するため、コイル形状での計測と素線に分解した計測との対応を調べ、コイル片で検出された欠陥位置と素線内の欠陥との対応を明らかとし、コイル試験法としての信頼性を検証した。さらに、具体的なエネルギー機器への応用の検討として、前述したコイルをモーターの巻線に適用した場合の効果と要求性能の数値解析、エネルギー貯蔵機能を付加した直流電力ケーブルシステムとしての適用可能性について検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.高速磁気顕微観察とAIの融合による超伝導線材・導体・コイル評価技術の革新 申請者等がこれまで開発した高温超伝導線材の欠陥可視化技術にAIによる解析手法を導入し、欠陥の自動検知に成功した。また、X線CTを用いた局所構造解析を並行して進めると共に、直接的なプロセス因子との関係を明確化するため、線材作製装置内のプロセス条件を計測・記録するためのシステムを導入した。さらに、コイルによる評価結果と素線における評価との対応を調べ両者が良く一致することを明らかとし、コイル巻線の欠陥検出技術の信頼性を検証した。 2.新しい導体構造の提案によるロバスト性の向上 空間的な不均一性の影響下における長尺線材のモデリング手法を提案し、複合導体化した場合について解析を行いロバスト性向上の効果を明らかとした。また、導体化のための具体的な製造プロセスを検討し、音波接合による低抵抗接合の実現によって、長尺導体化の見通しを得た。また、具体的な適用例としてモーター巻線ならびにエネルギー貯蔵機能を有する電力ケーブルにおける効果と要求仕様に関する検討を行った。 以上の成果について、5報の原著論文を発表すると共に、30件の学会発表(うち4件は国際会議における招待講演)を行うなど、国際的にも評価を得ている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度開発した、磁気顕微鏡観察とAIを用いた長尺高温超伝導線材内の欠陥の自動検知とその精度の検証を進めると共に、欠陥種別の区分や局所的構造との対応の調査を進めることで、欠陥の因子をより明確化する。並行して、プロセス条件と線材性能との対応について調査を進め、素線の更なる性能向上を実現する。音波接合を用いた複合導体化プロセスついても、AIを活用した同様のアプローチによって界面抵抗のさらなる低減や均一性の向上など最適化を図ると共に、連続的な接合処理が可能なシステムを確立し、長尺化を実現する。また、得られた複合導体における接合の均一性、機械特性について評価を行う。さらに、コイル巻線時における欠陥部位の組織観察を進め、劣化の原因を調査すると共に、複合導体を用いた場合の性能の検討を含めたコイル化の準備を進める。
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