研究課題/領域番号 |
19H05623
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
岡部 徹 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (00280884)
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研究分担者 |
竹田 修 東北大学, 工学研究科, 准教授 (60447141)
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研究期間 (年度) |
2019-06-26 – 2024-03-31
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キーワード | チタン / 脱酸 / リサイクル / 乾式プロセス / 希土類元素 |
研究実績の概要 |
チタン (Ti) は無尽蔵の埋蔵量を有し、高い耐食性を示す。また Ti 合金は極めて高い比強度を有する夢の未来材料である。しかし、Ti は酸素 (O) との結合力が極めて強く、低いコストで鉱石 (TiFeOx) から直接、金属 Ti を製造する技術が存在しない。このため、Ti 製品の価格は高く、広く一般には普及していない。Ti 製品の製造工程では、O や鉄 (Fe) などの不純物を含むスクラップが多量に発生する。Ti 製品の低価格化に向けて、不純物濃度の高い Ti スクラップを高純度化する新しいプロセスが求められている。Ti は Fe や O と高い親和性を有するため、Ti 中の Fe や O を除去する工業プロセスは存在しない。本研究では、主に Ti 中の O を除去 (脱酸) する新規プロセスを開発し、Ti スクラップをバージン材 (スポンジ Ti) よりも高純度化する「アップグレード・リサイクル」を実現することを目的とする。 近年我々は、熱力学的考察に基づいて、希土類元素の強力な脱酸能を見出し、特に希土類のオキシハライド生成反応を利用すると、Ti 中の O を極低濃度まで除去できることを理論的に予想した。2019年度の研究では、金属イットリウム (Y) を脱酸剤として用いて、希土類オキシクロライドの生成反応を利用すれば、100 mass ppm O を下回る、極低 O 濃度の Ti を製造できることを実験的に明らかにした。また、金属マグネシウム (Mg) を脱酸剤として、MgCl2–HoCl3 中で電気化学的脱酸を行うことで、安定的に 1000 mass ppm O の Ti が得られることを実証し、電気化学的脱酸法の有効性を明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
希土類金属を脱酸剤とする希土類オキシハライドの生成反応による脱酸プロセスについて、その有効性を実証した。さらに、電気化学的脱酸法の有効性が明らかにした。 脱酸反応後のTiサンプルの詳細な分析を進める過程で、当初の想定を上回るレベルで、一部の希土類元素のTiサンプルへの混入が判明した。実プロセスの開発を進めるうえで、このTiサンプルへの汚染の防御が不可欠なため、汚染現象の原因解明及び防御策の開発を追加して実施する必要が生じた。そこで、繰越申請をして、汚染を抑制するための金属 Ti フィルターを介した新しい脱酸プロセスを開発した。Ti フィルターを用いることで、希土類金属の汚染を抑制しながら脱酸反応が進行することを確認した。当初は、脱酸プロセスにおける鉄などの不純物元素による Ti の汚染を2021年度以降に検討する予定であったが、この Ti フィルターを介した脱酸プロセスが適用できると考えられる。 以上に述べたように、繰越を行って、Ti中への不純物汚染の抑制方法を見出したことで、結果的に、当初の予定より研究の進展が加速した。今後も当初の予定を上回る研究成果が見込まれる。
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今後の研究の推進方策 |
ランタン (La) 、セリウム (Ce) 、ネオジム (Nd) および、ホルミウム (Ho) を用いた脱酸反応について検証する。また、それらのプロセスを電気化学的脱酸プロセスに発展させる予定である。一連の研究を通じて、脱酸反応の学理を追求する。さらに、希土類オキシハライドの熱力学的性質や物性などの基礎的データを取得する。 また、脱酸生成物である希土類オキシクロライドから希土類塩化物を再生するプロセスについて検討する。 Feなどの不純物の挙動を解析し、Ti への汚染の低減には、Tiフィルターを用いたプロセスの有効性を評価する。 以上の要素技術をもとに、実スクラップを用いる場合や、大規模処理における課題解決にも取り組み、Ti の一次原料 (スポンジTi) よりも純度が高い Ti をスクラップから再生する革新的な新製造技術(アップグレード・リサイクル技術)の確立を目指す。
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