研究課題/領域番号 |
19H05625
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
東 正樹 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 教授 (40273510)
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研究分担者 |
竹中 康司 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (60283454)
森 茂生 大阪府立大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20251613)
竹澤 晃弘 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (10452608)
壬生 攻 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (40222327)
綿貫 徹 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 関西光科学研究所 放射光科学研究センター, センター長 (30343932)
Das Hena 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 特任准教授 (60836170)
重松 圭 東京工業大学, 科学技術創成研究院, 助教 (40754578)
酒井 雄樹 地方独立行政法人神奈川県立産業技術総合研究所, 「次世代機能性酸化物材料」プロジェクト (東P), 研究員(任期有) (80758798)
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研究期間 (年度) |
2019-06-26 – 2024-03-31
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キーワード | 負熱膨張 / 相転移 / 局所構造解析 / 複合材料 / トポロジー最適化 |
研究実績の概要 |
1.負熱膨張特性を左右する相転移挙動の理解と、材料探索へのフィードバック 約10%もの体積差を持つ正方晶と立方晶相が共存するPb0.82Sr0.18VO3の、両相の空間分布を、ブラッグコヒーレント回折イメージングで明らかにした。さらに、PbへのSr置換、Bi置換、La置換の正方晶→立方晶相転移に対する効果を解明し、その結果に基づいて、Pb0.8Bi0.1Sr0.1VO3で、9.3%の体積減少を伴う負熱膨張を実現した。これは負熱膨張材料としては最大の値である。 2.電荷移動、軌道秩序、強誘電転移の相転移型巨大負熱膨張材料の探索 低温のI2/c相から高温のC2/m相への転移に伴って体積収縮を示すZn2P2O7のMg置換を行い、Zn1.6Mg0.4P2O7において室温近傍で線熱膨張係数-66.4 ppm/Kの負熱膨張を実現した。また、100 Kから700 Kの広い温度域で線膨張係数-14 ppm/Kの負熱膨張を示すCu1.8Zn0.2V2O7のVを一部Pで置換したCu1.8Zn0.2V2-yPyO7について、負熱膨張を維持したまま、電気絶縁性を向上させることに成功した。さらに、PbTiO3型ペロブスカイトBi0.5Na0.5VO3のNa+をBi3+で置換する事で電子ドープを行い、負熱膨張物質化に成功した。 3.複合材料の熱膨張係数の設計と検証 トポロジー最適化アルゴリズムを用いた、負熱膨張抑制効果を最大化するフィラー分散構造の件等を行い、連続した網のような構造が最適であることを明らかにした。また、網状にすることが難しければなるべく長い繊維状にすることが有効であることがわかった、さらに、負熱膨張材樹脂複合材料での3Dプリンティングのために、まずは炭化ケイ素をダミー材料としてフィラメントを成型し、実際に3Dプリンティングが可能であることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
電子顕微鏡観察とブラッグコヒーレント回折イメージングで相転移型負熱膨張材料の低温相、高温相のドメイン構造を明らかにし、その知見を活用することで世界最高性能の負熱膨張材料Pb0.8Bi0.1Sr0.1VO3を開発することに成功した。また、本プロジェクトで発見したZn1.6Mg0.4P2O7やCu1.8Zn0.2V2-yPyO7の商品化も順調に進んでいる。複合材料の3Dプリンティングにも道筋がつき、研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
1.負熱膨張特性を左右する相転移挙動の理解と、材料探索へのフィードバック 負熱膨張特性を左右する相転移挙動を理解するために、電子線PDF法やナノビーム電子回折法を用いて、ドメイン構造観察およびナノスケールでの局所構造観察を行っていく。また、TEM内で100Kから800Kまでの温度可変を行い、相転移に伴う構造変化のその場観察を通じて、負熱膨張特性の微視的メカニズムを明らかにしていく。また、ブラッグコヒーレント回折イメージングで低温相・高温相のドメイン構造の温度変化を明らかにする。メスバウアー分光を用いてスズ含有窒化物をはじめとする負熱膨張係数物質の局所的価数状態や局所的磁気構造の温度依存性を探り,負熱膨張係数の発現機構に関する局所情報を得る。 2.電荷移動、軌道秩序、強誘電転移の相転移型巨大負熱膨張材料の探索 BiNi1-xFexO3の動作温度範囲の拡大に取り組む。Feを2種以上の遷移元素で置換するとで転移をなだらかに出来る事を確認しているので、最適組成を探索する。新規の負熱膨張材料の開発として、配位数変化をともなう構造相転移の活用に取り組む。前者については、AlNなど多くの物質でみられる、4配位構造から6配位構造にともなう構造相転移で体積が10数%以上収縮することを活用しようとするもので、実現すればこれまで最大級の負熱膨張となることが期待される。また、将来的な産業利用を念頭に、環境負荷や電子デバイスに対する腐食の懸念から使わないことが望ましい亜鉛やリンを使わずに、高い熱膨張抑制能力示す新たな負熱膨張材料の開発を目指す。 3.複合材料の熱膨張係数の設計と検証 FDM式3Dプリンティングで結晶性材料の造形を行い、負熱膨張材料による残留変形低減を実現する。また、負熱膨張材料含有樹脂を用いた人工構造体での巨大負熱膨張を実現し、人工構造体を用いた熱膨張抑制大規模コンセプトモデルを提案する。
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